Dvorak 配列とは、ANSI 規格にもなっているキーボード配列のこと (ANSI INCITS 207-1991)。タイプライターのために August Dvorak 博士が 1930 年代に開発した。
Dvorak 配列を語るには、その前に、現在標準になっている Qwerty 配列を語らねばなるまい。
Qwerty 配列って?
お手元のキーボードをご覧あれ。
上から一番の段には数字が並んでる。
では、二番目の段は?
左から q,w,e,r,t... と並んでいるでせう。このキー配列を、キーボードの左上から六文字を取って QWERTY 配列と呼んでいる。キー配列を全部見ると、こんな感じ。
q w e r t y u i o p a s d f g h j k l ; z x c v b n m , . /
Qwerty 配列は、タイプライターの初期に生まれ、世界的に普及。後にテレタイプでも採用された。コンピューターのキーボード配列は、テレタイプのキー配列を継承したものらしい。
ただし、Qwerty 配列の成立経緯は、謎に包まれ、分かっていないそうな。
とはいえ、「Qwerty 配列は最も効率的な入力インターフェースではない」ことは多くの人達が言っている。一つシンプルな例を挙げると、英文にあって入力頻度の高い文字をホーム・ポジションで打てない。
英語の文字頻度については、世界で一番有名な探偵の言葉を引用しませう。
As you are aware, E is the most common letter in the English alphabet...
... Speaking roughly, T, A, O, I, N, S, H, R, D, and L are the numerical order in which letters occur, but T, A, O, and I are very nearly abreast of each other...
皆さんもお気付きのことと思いますが、E は英語のアルファベットで最もよく見られる文字です
(E に続く文字は) 乱暴に言えば、T, A, O, I, N, S, H, R, D, L の順番で現れる率が高い。しかし、T, A, O, I はほとんど一緒といってよいでしょう。
さて、E, T, A, O, I を上の Qwerty 配列 (or 手元のキーボード) の中から探してみやう。
「A」以外の文字が、ホーム・ポジションにないことが分かる。しかも、「A」は指の中で一番打ちにくい小指に割り当てられている!
Dvorak 配列は?
では、Dvorak 配列はどんな配列か見てみやう。
追記: satolog: キーボードの Dvorak 配列に Dvorak 配列キーボードの大きな写真があります。
' , . p y f g c r l a o e u i d h t n s ; q j k x b m w v z
見ての通り、英文において出現頻度の高い E, T, A, O、N, S, H, D をホーム・ポジションで打てる。I と D も、ホーム・ポジションと同列の段に配置されている。
英語で一番よく使われるワードは the だそうだけど、Dvorak 配列ならホーム・ポジションから指を動かすことなく the を入力することができるのが見てとれる。
更に、Dvorak 配列では、ホーム・ポジション左手に母音 (a,o,e,u,i) を、右手に子音を配置している。実は、左右の手で相互打鍵すると、速く、スムーズな入力になる。この母音・子音の配置は、そういったことも考慮に入れた配列なのだそうな。
最も優れたキー配列は?
じゃあ、Dvorak 配列は最高のキー配列なの? と聞かれると、おそらくそうじゃない。Dvorak 配列の後にも、いろんなキー配列が考案されていて、そのうちのいくつかは Dvorak 配列より優れている (らしい)。
また、Qwerty/Dvorak 配列でどちらが優れているかといった学術的な研究はあるもけれど、決定的な軍配が上がったという話は聞かない。
なので、Dvorak が本当にいい、と客観的には言えない。まぁ、それはそれとして、いちユーザーとしての感想を言うと、Dvorak 配列の方が Qwerty 配列より打ち易い!
よく使う文字がホーム・ポジションに集まっているので、指の動きも小さく仰えられ、入力スピードも速めになる。また、R. S. I. (Repetitive Strain Injury / 反復運動(過多)損傷 ※例えば腱鞘炎) に対しても効果があるそうな。
ぼくも最初から Dvorak 配列を使ってたわけじゃない。Qwerty 配列がタッチタイピングが出来る段階で、Dvorak 配列に興味を持ち、Qwerty 配列断ちをして、Dvorak 入力をし続けた。ぼくの経験だと、だいたい三日位いで指にしっくり来た。
キーボードを打ちまくる仕事の人は、一つ配列にも目を向けてみませんか。
ref
- yasuokaの日記 - どうやってQWERTY配列は主流となったか
- yasuokaの日記 - QWERTY配列に対する誤解
- Dvorak配列の説明 (Dvorak キーボードを使うためのソフトウェアの解説も...)
僕も dvorak 試してみます。
ReplyDeleteリンクありがとうございます。ただ、えっと、「ANSIの第2規格」っていうのはヘンじゃないか、と思います。ANSIには「第1規格」も「第2規格」もありませんので、ここはさっくり「ANSI INCITS 207」っていう規格番号を示した方がいいんじゃないかと。
ReplyDeleteDvorak 配列は、ローマ字入力にも使えそうですね。
ReplyDeleteというか、すごーく楽に打てそう。
乗換えが容易だったと聞けば、興味が沸いてきますね。
キーボードを壊しまくっている私、乗り換えてみようかなぁ。
とりあえず、@akaさんご紹介の「Dvorak配列の説明 (Dvorak キーボードを使うためのソフトウェアの解説も...)」をはてブしておこう。
QWERTY 配列について。
タイプライター出始めの頃、一般の人にキー配列を容易に覚えさせないようにという意図から、理解しにくい配列を採用した、と聞いたことがあります。
本当か嘘かは知りませんが、もし本当なら、テニスの点数みたいですね。=)
> Satoshi さん
ReplyDeleteおっ、早速チャレンジャーが ;)
Satoshi さんが、Dvorak を気に入って下さると嬉しいな。
あとで、Satoshi さんのエントリーにもコメントしに行きます。
プログラマーで本を何冊も出している結城さんが、こんなエントリーを書いています。参考になれば。
- [結] 2006年7月 - 結城浩の日記 自分で本を出す場合のアドバイス
> 安岡さん
ご指摘ありがとうございます。さっそく修正しました。
私は、安岡さんの「文字コードの世界」「インターネット時代の文字コード」で文字コードの勉強をしました。ご本人からコメントを頂けて、恐縮です。
> ちゃめさん
機会を見つけて、Windows で Dvorak 配列にするソフトウェアのレビューもしてみますね。
> QWERTY 配列について...
正確に言えば、「印字棒の絡まりをなくすために、わざと打ちにくい配列を選んだ」という説だと思います。そして、「その説は実はデタラメだ」というのが、ref 欄のリンクにある安岡さんのエントリーです。興味を持ちであれば、是非お読み下さい :)
私の本をお読み下さって、どうもありがとうございます。実は、キー配列に関する本も書きたいなぁ、と思ってはいるのですが、つい最近まで『文字符号の歴史 欧米と日本編』にかかりっきりだったもので、キー配列についてはSlashdotの記事でお茶を濁している次第です。いずれ、頑張って本を書こうと思いますので、その際にはよろしくお願いします。
ReplyDelete> 『文字符号の歴史 欧米と日本編』
ReplyDeleteそれはまた魅力的なタイトルですね。
> キー配列に関する本も書きたいなぁ...
Slashdot の内容が本になるのであれば
間違いなく買う (か図書館で貸りる) と思います :)
> ...と思いますので、その際にはよろしくお願いします。
あ、こちらこそ、よろしくお願いします。
はじめまして。
ReplyDelete私はMacユーザなんですが、Mac OS Xでは標準でDvorakが使えるので、少し試してみたことがあります。
少しやっただけでも『指の動きが少ない!』というのを実感できました。
ただ、生のDvorakだと、ZXCV辺りのショートカットキーが打ちづらくなるのが難点でしょうか。
(修飾キーを押したときだけQwertyに戻る設定もありますが)
プログラム書く人は演算子が若干入力しやすくなるのも良い所かもしれませんね。
私も本格的にDvorakをやってみようかな。
eisuu-kana さん、はじめまして。
ReplyDelete> Mac OS Xでは標準でDvorakが使える
> 修飾キーを押したときだけQwertyに戻る設定もあります
それは知りませんでした。情報ありがとうございます。
> 生のDvorakだと、ZXCV辺りのショートカットキーが打ちづらくなる
ショートカット・キー回りは、Qwerty 前提で作られているので、どうにも難しいものがありますね。私も苦労した覚えがあります。ちなみに、今は、ショートカットを含めて Dvorak に移行済です ;)
> 私も本格的にDvorakをやってみようかな
一度究めれば、一生ものは保証しますよ :)