2020-10-14 (水) 02:00、Apple はイベントを開いて HomePod mini と iPhone 12 の発表を行なった。
6 月の WWDC 2020、9 月の Apple イベントと同じく、今回のイベントも聴衆なしのビデオ配信の形で行なわれた。
今回のイベントで発表された主な新製品は次の通り:
- HomePod mini (HomePod の廉価版)
- iPhone 12 (iPhone 11 の後継機)
- iPhone 12 Mini (小さな iPhone 12)
- iPhone 12 Pro (iPhone 11 Pro の後継機)
- iPhone 12 Pro Max (iPhone 11 Pro Max の後継機)
噂に上っていた HomePod 第 2 世代、Apple TV 第 5 世代、、Apple のオーバーイヤー・ヘッドホン、Apple Silicon 製の MacBook の発表はなかった。
今回発表された新製品を簡単にまとめてみる:
HomePod mini
HomePod のサイズダウン廉価版となる HomePod mini が登場した。色は HomePod と同じホワイトとスペースグレイの 2 色展開。形は HomePod の円筒形に対して球形を取る。もちろん 360 度スピーカー。大きさは HomePod が高さ 172 mm に対して 84.3 mm、半分弱の大きさになった。重さにいたっては HomePod の 2.5 kg に対してたったの 345g。価格は 10,800 円 (税別)。2020-11-06 (金) 予約開始、2020-11-16 (月) 発売予定。
HomePod との違い
前述のように HomePod mini は HomePod と比べて小さく・軽くなった。それ以外に変わった点を見てみる。
HomePod mini のチップは S5 チップ。これは Apple Watch Series 5 と同じもの。HomePod のチップは iPhone 6 などで採用された A8 チップだった。パフォーマンス的にはチップ・シリーズが別なのでどっちが上か良く分からない。。。
HomePod mini のスピーカーユニットはフルレンジドライバとデュアルパッシブラジエーターを採用する。対して HomePod は高偏位ウーファーと 7 つのツイーターアレイだった。スピーカーユニットでツイーターは高音を鳴らすもの、ウーファーは低音を鳴らすものを指す。HomePod は高音と低音を別々のスピーカー・ユニットで鳴らす設計をしていた。1 つのスピーカーユニットで高音から低音まで全て鳴らすのは無理があるので、このようにスピーカー・ユニットを分離することで高音質を実現させていた。HomePod mini はフルレンジドライバを採用する。これは 1 つのスピーカーユニットで高音から低音まで全部の音を出す。HomePod に比べて多少無理をして音を鳴らすことになる。その分、HomePod より音質が劣ることになる。パッシブラジエーターはザックリ言えば低音を鳴らすための補助ユニットで、ウーファーほど強力じゃない。
HomePod では自分で出した音をマイクで拾い音質を改善する「空間認識機能」があった。HomePod mini ではその空間認識機能も省かれている。
ちなみにマイクは HomePod の 6 つに対して 4 つに減っている。
HomePod mini では主にスピーカーユニットの簡素化と空間認識機能の削除で、本家 HomePod との音響的な差別化を図っているのだと思う。逆を言えば、それ以外の機能は HomePod を踏襲している。2 台の HomePod mini を用意すればステレオ・スピーカーとして動作するし、AirPlay 2 を使ってマルチルームで音楽再生もできる。Siri で音楽をかけられるし、ホームを操作したりもできる。
最後に HomePod mini だけのデバイスとして U1 チップが搭載される。iPhone を HomePod に近づけると iPhone でかかっている曲を HomePod に引き継ぐ Handoff 機能があるけれども、この時の iPhone と HomePod が近くにあることを検知する精度が上がる。。。らしい。
サードパーティーの音楽アプリ
ここからは HomePod mini のセッションで紹介された HomePod, HomePod mini 両方で使える新機能について書く。
まずは音楽アプリについて。現在 HomePod で聴くことのできる音楽系サービスは次の通り:
- Apple Music
- Podcast
- iHeartRadio
- radio.com
- TuneIn
イベントでは数か月以内に次のサービスが HomePod に対応することが発表された:
- Pandora
- Amazon Music
Pandora は日本でサービス開始していないので、Amazon Music だけが対象となる。イベントでは Spotify についての言及はなかった。
インターコム
HomePod はインターコム機能を提供する。これは Amazon Echo のアナウンス機能、(Google) Nest Home のブロードキャスト機能と同じ。家の中にある HomePod に対して、自分の声を届けることができる。
インターコム機能は Apple の各種デバイス (iPhone, iPad, Apple Watch, AirPods, CarPlay) と連携されるらしく、インターコムの通知が iPhone に届いたり AirPods からインターコムに対して返事をすぐに返したりできる。
iPhone 12 と iPhone 12 Mini
iPhone 11 の後継機 iPhone 12 とその小型版 iPhone 12 Mini が発表された。
iPhone 12 の色はブルー、グリーン、プロダクト・レッド、ホワイト、ブラックの 5 色展開。ディスプレイ・サイズは iPhone 11 と変わらず 6.1 インチ。容量は 64 GB, 128 GB, 256 GB が用意されている。価格は 85,800 円 (税別) から。2020-10-16 (金) 午後 9 時予約開始、2020-10-23 (金) 発売予定。
iPhone 12 Mini は色・容量のラインナップともに iPhone 12 と変わらず。ディスプレイ・サイズは iPhone 11 の 6.1 インチより小さく iPhone SE (第 2 世代) の 4.7 インチより大きい 5.4 インチ。価格は 74,800 円 (税別) から。2020-11-06 (金) 午後 10 時予約開始、2020-11-13 (金) 発売予定。
以下、iPhone 12 の説明を書く。iPhone 12 Mini はサイズが小さい以外 iPhone 12 と同じ。違うところがあればその旨書いていく。
5G 対応
iPhone が 5G に対応する。5G は 4G LTE より高速な通信。
5G には、高速な「ミリ波」と少し遅い「Sub6」という 2 種の周波数帯があって、iPhone 自体は両方に対応する。けれども、日本の通信事業社はほとんどミリ波対応していないので、iPhone 12 を買っても (日本では) 5G Sub6 の恩恵にしか与れない。
Super Retina XRD ディスプレイ
iPhone 12 のディスプレイは、iPhone 11 の Liquid Retina HD ディスプレイから iPhone 11 Pro で採用された Super Retina XRD ディスプレイへ変更される。Liquid Retina HD ディスプレイはいわゆる液晶ディスプレイで、Super Retina XRD ディスプレイは OLED ディスプレイ。
セラミック・シールド
ディスプレイの前面ガラスにセラミック・シールドと呼ばれる技術が導入された。Apple は耐落下性能が従来の 4 倍になるとしている。
A14 Bionic
iPhone 12 は A14 Bionic チップを採用する。A14 Bionic は第 4 世代 iPad Air (10 月発売とアナウンスがあったけど、まだ予約受付を開始していない) にも採用された Apple の最新チップ。5 nm プロセスを採用して、より多くのトランジスターが積めるようになっている。A13 Bionic チップと比べて大きな仕様変更はなく順調にパフォーマンスが向上したもの。
カメラ
iPhone 12 のバックカメラは iPhone 11 と同じ広角カメラと超広角カメラのデュアルカメラ。
タイムラプスがナイトモードにも対応したほか、Dolby Vision 対応の HDR ビデオ撮影ができるようになった。
フロントカメラはナイトモード及び Deep Fusion に対応し、Doly Vision 対応の HDR ビデオ撮影ができるようになった。
MagSafe
MacBook で使われていた MagSafe の iPhone 版が登場した。
Qi を使ったワイヤレス充電の問題点は充電用コイルの上に適切にデバイスを置かないと充電がされないこと。iPhone のような端末だと、ちゃんと Qi 充電器の上に置いていても通知のバイブで iPhone 自身が動いてしまい充電に失敗する、ということが良くあった。
MagSafe は iPhone と MagSafe 用充電器を磁石でくっつけてしまい、Qi 充電によくある充電の失敗をなくしてしまう。
MagSafe 充電器は 4,500 円 (税別) で 2020-10-16 (金) から注文受付開始。何ワットで充電されるのかは、よく分かんない。
MagSafe アクセサリーとして充電器の他にケースとカード入れも発売される。ケースはシリコンケースとクリアケースの 2 種。MagSafe の磁力を利用して、簡単に取り付け・取り外しができるとのこと。カード入れはレザー製でケース同様磁力で iPhone にくっつく。MagSafe ケースの上にカード入れを付けることも可能。クレジットカードを入れても大丈夫なようにシールド機能も付いている。ケースやカード入れを付けたまま Qi 充電もできるし、MagSafe 充電器を使って「外れない」充電もできる。
耐水性能
IEC 規格 60529 に基づく IP68 等級こそ iPhone 11 とは変わらないものの、「最大水深 2 メートルで最大 30 分」の耐水性能が「最大水深 6 メートルで最大 30 分」に向上した。
電源アダプターとイヤホン
iPhone 12 からは電源アダプターとイヤホンが付かない。USB-C・ライトニングケーブルが付くので、それを使って充電する。
iPhone 12 Pro と iPhone 12 Pro Max
iPhone 11 Pro の後継機 iPhone 12 Pro と、iPhone 11 Pro Max の後継機 iPhone 12 Pro Max が発表された。
iPhone 12 Pro の色はパシフィックブルー、ゴールド、グラファイト、シルバーの 4 色展開。ディスプレイ・サイズは iPhone 11 Pro の 5.8 インチから大きくなって 6.1 インチへ。容量も 64 GB モデルがなくなり 128 GB、256 GB、512 GB の 3 モデルが用意された。価格は 106,800 円 (税別) から。2020-11-06 (金) 午後 10 時予約開始、2020-11-13 (金) 発売予定。
iPhone 12 Pro Max は色・容量のラインナップともに iPhone 12 Pro と変わらず。ディスプレイ・サイズは iPhone 11 Pro Max の 6.5 インチから大きくなって 6.7 インチへ。価格は 117,800 円 (税別) から。2020-11-06 (金) 午後 10 時予約開始、2020-11-13 (金) 発売予定。
以下、iPhone 12 Pro の説明を書く。iPhone 12 Pro Max はサイズが大きい以外 iPhone 12 Pro と同じ。違う点があればその旨書いていく。
iPhone 12 と同じスペック向上
5G 対応、ディスプレイのセラミック・シールド、A14 Bionic チップの採用、各種カメラ機能の向上、MagSafe 対応、耐水性能の向上、電源アダプターとイヤホンの廃止は iPhone 12 と同じなので、上の記述を参照のこと。
LiDAR スキャナー
iPhone 12 Pro に LiDAR スキャナーが搭載される。LiDAR スキャナーは iPad Pro 12.9 (第 4 世代) で初めて搭載されたセンサーで、赤外線を使って対象までの距離を測る。AR アプリが高速かつ正確に動作することが期待される。
また、ナイトモードのポートレート撮影を可能にしたり、暗い場所でのオートフォーカス時間を短くする (6 倍速くなった!) という。
Apple ProRAW
RAW 形式で写真を保存・編集できるようになる。
2.5 倍光学ズーム
iPhone 12 Pro Max のみ光学ズームが 2 倍から 2.5 倍になる。これにより、デジタル・ズームも 10 倍から 12 倍へと向上する。
センサーシフト光学式手ぶれ補正
iPhone 12 Pro Max はカメラの手ぶれ補正を従来の光学手ぶれ式補正からセンサーシフト光学式手ぶれ補正に変更した。また iPhone 12 Pro はデュアル光学式手ぶれ補正に変更した。
カメラ詳しい人、センサーシフト光学式手ぶれ補正の説明プリーズ!
まあ、今までの手ぶれ補正より良くなったんだと思う。。。
あとがき
HomePod mini はそこそこ順当なダウンサイズに落ちついたんじゃないかな? 個人的には値段が少し高くなっても空間認識機能は残しておいて欲しかったところ。HomePod mini が発売される 2020-11-16 (月) 前後に iOS の新しいバージョン (14.2 かな?) がリリースされて HomePod OS もバージョン・アップするんじゃないかと思う。きっとステレオで買う (お値段も安かったので)。
iPhone 12 は 5G 対応がメインかな。今の日本だとそれほどメリットを感じない。5G の普及率もそうだけど、ほとんど在宅だし... そういう意味では MagSafe は仕組みとして面白いと思った。あと、iPhone 11 Pro Max を買って、OLED ディスプレイの美しさに驚いたので iPhone 12 を OLED ディスプレイ目的で買うのはアリかもしれない。