会議がもっとスムーズにならないものかと思って、ブックオフで 100 円コーナーから買った本。
高橋誠の「会議の進め方」。日経文庫。1987 年出版。内容に古さを感じつつも、良書だったのでエントリーにしてみる。
客観性の高い良書
本書の良さは客観性の高さ。1987 年当時で、38 の「会議に関わる文献」を参照している。また、ローソンを始めとした企業からのデータも多数利用している。
一例を挙げる。会議の種類について、作者は立正大学の上原学・成城大学の石川弘義・ペンシルベニア州立大学のハロルド・P・ゼルコの三氏の分類法を紹介し、それらの分類法がどういう視点に立脚しているかを解説している。その上で、作者自身の意見として、会議を 4 つ (伝達・創造・調整・決定) に分類している。
「私はこういう会議で成功した」とか「この会議方法が良い」といった押しつけ感がなく、多くの意見を取り入れてより客観的な視点を保とうという努力が伺える。どちらかというと、研究論文の色あいが強い。
やや突飛なところでは、アルフレッド・フライシュマンの「会議防害法」を引用している。これには 18 もの戦術が注挙されていて面白い。もちろん、そうやって会議を防害しようという話ではなくて、発言が会議の防害になっていないかのチェック・リストに活用するのが目的。
会議はリーダーが全てをリードするものではない
本書で一番印象に残った言葉を引用する。
会議リーダーが会議すべてをリードするのではなく、メンバーがお互いの資源 (各人のもつ力) を最大限に提供しながら、かつ相互にリーダーシップを発揮しあう会議が理想的
会議の進め方 p.66
この言葉の後に、「会議リーダーは本当にリーダーシップを持つ人が選ばれないといけない」と続く。しかし、ぼくはそうは取らない。会議を良くするためには、会議に参加する全てのメンバー、すなわち一般社員全員が会議のやり方を真剣に考える必要があるのではないかと思った。だって、会議参加メンバーが「相互にリーダーシップを発揮しあう」なんてほとんど不可能に近いから。
もし、そういう理想的な会議を達成しようとするなら、会議メンバーは相手を尊重し合う精神を持ち、かつ自分でもリーダーシップが取れるようでなければならない。それは会議リーダーとしての資質を持てというのと大差ない。従って「会議の進め方」といった本は、リーダーになってから読むのではなく、一般社員 (願わくば新入社員) が須く興味を持って一読するのが理想、とぼくは受け取った。
良い会議には、良いリーダーと良いメンバー。両者が揃って実現する。そう思えただけで、本書を読んだ価値があった。
落ち穂拾い
本書で面白いと思った点を列挙しておく。
- オフィスは、...、人間中心の「考場」
- 会議中に BGM や BGV (バックグラウンド・ビデオ) を流す
- 会議室はニュートラルな色か彩度の低い色が望ましい
- 自由な発言を促す会議はラウンド・テーブルで行ない、リーダー自らが末席に座り上下関係を取り去る
- 会議や発表の様子をビデオに撮り、反省の材料にする
本書の古さ
本書は 1987 年に出版された。1987 年当時を振り返ってみたい。Windows 95 が発売されたのが 1995 年。NEC の PC-88 が 1981 年に発売されている。会社の中にまだパソコンは普及していない。メールもないし、IM もない。CD や LD は発売されていたが、ビデオでは1980 年代半ばに VHS がベータに実質的に勝利した。
本書の内容も、時代にそくしたもので、今読むと古くて使えない。本書で取り上げるツールを列挙する (括弧内は今なら使うであろうツール)。
- ノート (→ ノート PC)
- OHP (→ PowerPoint)
- スライド (→ 画像ファイル)
- テレビ会議 (→ Skype)
あとがき
本書は古い本なので、わざわざ買う必要はないと思う (中古であれ... ね)。気になったら、図書館で借りてみる程度でいいんじゃないかな。
と、このエントリーを締めようと思っていたんだけど、どうやら 2008 年に同じ作者が同じ題名で本を出してるね。全面改訂ということなので、こっちの方がお勧めかも。
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