2012-04-01 (日)。みーさん邸を訪問した。
先週、初の自宅オフ会を行なった。以来、オーディオを触るのが怖くなった。音楽が楽しくなくなった。どの CD をかけても心が動かない。本を読む気力も、ブログを書く気力も失せてしまった。そんな中、みーさんと連絡を取ったのが 3/31 (土)。こっちが引くほどの熱列なラブコールを受けた。明日 (つまり 4/1)、会いたいという。
無理は承知の上で すぐでも会いたいです
こういう言葉にぼくは弱い。また、「心身ボロボロ、しかし、敢えて虎穴に入る」がぼくの信条。ここまで誘われて、断るのはぼくの信条に反する。逡巡一瞬、「参ります」と返事を出した。
みーさんと会う
最寄駅の改札で待ち合わせ。現れたのは還暦を過ぎた初老の男性。ハキハキと話しかけてくれながらも、ぼくのペースに合わせて下さる (ぼくは人見知りなので、初めての人の前だと口調がゆっくりになるタイプ)。細かい気遣いを感じながら、スーパーへ。買い物をした後、バスに乗ってみーさん邸に向け出発。
みーさん宅に入ると、奥さんから「いらっしゃいませ」の声。ちょっと感動。オーディオに傾き過ぎちゃってると、「これはオーディオ仲間の集まりです」って周りを寄せつけない空気になっちゃうところがあるのだけれども、みーさん宅ではそういう空気がない。良い夫婦関係だなぁ。
オーディオ・ルームに通されて、みーさんお勧めの CD を視聴。みーさんのオーディオ・システムは、座椅子 (の様なもの) に座って聴く。床上聴きタイプ。途中、みーさんが中座してコーヒーを持って来て下さった。綺麗なコーヒー・カップに、少し砂糖の入ったコーヒー。美味しい。将棋の駒置きの様な小さなテーブルがちょこんと。これがコーヒー・テーブル。ちょうどコーヒー・カップのお皿がピッタリ乗るサイズ。場所を取らずに、音楽を楽しめる。スタイリッシュ!
昼食抜きだったので、音楽鑑賞を中断。途中で買ったラーメンを頂く。テーブルはオーディオ・ボードを工作したもの。なかなか得がたい経験をする。
半熟玉子がいと美味しゅうございました。
再びオーディオ・ルームに戻って音楽鑑賞。持参した CD を全てかけて、みーさんの CD ライブラリーからまた音楽を聴き、気がついたら午後 6 時。もっとお話ししたかったけれど、名残惜しく、みーさん邸を後にした。
みーさんのオーディオ・システム
みーさんのオーディオ・システムは以下の通り:
- CD/SACD プレーヤー: Esoteric X-01D2
- プリ・アンプ: Accuphase C-3800
- パワー・アンプ: ALLION S-200
- スピーカー: Audio Machina The PURE System MK II
リスニング・ルームはオーディオ専用。縦 2.4m、横 4.5m の 7.4 帖。部屋の長辺側にスピーカーを配置。うちの部屋より少し広い位いだけれども、布団・PC・机・衣裳ボックスそして 6 つの棚のない環境は、よりオーディオ向け。
種々の電源ケーブルに、Synergistic Research の高級インターコネクト・ケーブル及びスピーカー・ケーブル。ラックは特注で作らせたという無垢アルミ製。スピーカーやパワー・アンプの下には、無垢アルミ (飛行機に使うジュラルミン製) と真鍮のハイブリッドな固まり。これはオーディオ・ボードと呼んで良いのかどうか分からないほどにガッシリとしている。
オーディオの話と音楽を聴く
音楽をかける。プリ・アンプのボリュームは約 10 時。ぼくの部屋で鳴らす最大ボリュームよりも大きな音が飛び出してきた。驚愕。慣れない音量に戸惑う。一曲、二曲聞くと慣れてきた。
みーさんのオーディオは、演奏者がステージにいるとしたら、第一列目で聴く様なサウンド。広がりもあって、奥行きも深い。ボーカルの生々しさ、サックスの色っぽさが圧倒的。ピアノは低音から高音までソツなく鳴らされ、特に高音域の音の鋭さはスッと心に入って来る。ステージ目の前な表現のため、ホール・トーンの様な残響感はあまり感じられない。ただし、残響感が皆無ということはなくて、ヴァイオリンやピアノ、そしてボーカルのフッと消えゆく余韻は出色。これはステージ前でないと味わえない音だと思った。
この様な感想をみーさんに伝えると、狙ってやっているのではないと言う。スピーカーに惚れて、セッティングを重ねて行った結果が、現状なのだとか。
みーさんはオーディオの土台に「低音」を置いている。低音をしっかりと鳴らしてあげれば、大低の音楽は良く聞こえると。そういう意味では、みーさんの持つ Audio Machina The PURE System は良く出来ている。The PURE System は 2 ウェイ・システム。中高音を担当する「モニター部」と低音を担当する「サブウーファー部」に分かれている。そしてサブウーファーを鳴らすパワーアンプは、スピーカー内蔵。一般に低音用のスピーカー・ユニットほど動かすのが大変。よりパワーのあるパワーアンプを要求する。The PURE System は、最適のパワーアンプが最初から入っている。だから、ALLION のパワーアンプが鳴らしているのは、「モニター部」のスピーカー・ユニットだけ。高価なパワーアンプを要求しない。上手く出来ている。
セッティングについても伺った。最初、スピーカーは壁際に置いてあった。音がスピーカーに張り付いた様であったという。壁からスピーカーを離すと改善。現在、スピーカーは壁から 72cm 離している。スピーカーの台の間の距離は 173.5cm。ほぼ 1cm 単位でのセッティング。これ以上広げすぎるとスピーカーの間の音が希薄になるし、狭くするとまたよくない。スピーカーの振り角をつけると、音場感が悪くなる。試行錯誤を繰り返しての、スピーカー・セッティングなのだという。
みーさんのオーディオ・システムに、経験によって裏付けられた割り切りと揺るぎなさを感じた。CD プレーヤーは進化が速いので高級機は狙わない (定期的に買い替え前提)。プリ・アンプには 40 年に渡って信用を置いている Accuphase を利用。スピーカーは、低音に力があるのが第一条件。その上でみーさんの心を震わせた Audio Machina を選択。パワー・アンプには Audio Machina の特性を十分理解して、「モニター部」を鳴らすのに十分なだけのパワー・アンプに留める。インターコネクト/スピーカー・ケーブル類は Synergistic Research を採用するも、「お金があれば全て最高級ケーブルにするか?」という問いには「否」。例えば「○○を最高級ケーブルに変えたら、自分には柔らかくなり過ぎた」との答え。経験に裏打ちされたケーブルの組み合わせに舌を巻く。ケーブルは絨毯に付かないよう全て浮かす、というのも経験からくる工夫。もちろん、低音を活かす努力も怠らない。その最たるものが、巨大な無垢アルミを使ったスピーカー・ボード (?) になる。
オーディオ機器の話はこれ位いにして、「音」の話もしませう。
Jennifer Warnes のアルバム「Hunter」から「Lights Of Lousianne」。冒頭のアコーディオンの響きは哀愁ただよい、続くギターの爪弾きは目に見えるよう。Warnes のボーカルも少し奥に立って歌っている情景が浮かぶ。曲の途中に入る小鳥の鳴き声が明瞭に聞こえ、ルイジアナの空を見る。
同アルバムから「Way Down Deep」。曲の頭に入る打楽器のドンッが凄い。低音が部屋全体を支配して、それだけでは足らずに低音が床から天丼へと伸びてゆく。部屋のキャパシティーを越えた低音が出ているのだと思うのだけれども、驚くべきはその低音の処理。普通なら、こんな低音はボーカルの音とかぶってしまう。それが、みーさんのシステムだと、Warnes のボーカルはかぶることもにごることもなく、リスナーの耳へと届いてくる。
SACD のサンプル・アルバムから、ストラヴィンスキーの「春の祭典」(ペトルーシュカだったかな?)。部屋全体が震えた。それでいて、各楽器の音が一つ一つ良く聞こえる。音楽としても破綻しない。痺れる。オーケストラの目の前で聴く様な迫力が目の前にあった。
ドイツのメタル・バンド Rammstein のアルバム「Sehnsucht」から「Engel」。この曲は最初口笛で始まり、ベースが導入をした後、本格的な音楽が始まる。一つステージを進むごとに音量が上がる。で、最初、口笛に合わせてボリュームを設定してしまった。バンド全体が楽曲を演奏し始めたら、その音量の大きさにみーさんがびっくりして、流石にボリュームを絞った。それは笑い話として、音数の多く、低音の強いこの曲で、シンバルの音がちゃんと輪郭を持って再生されていて気持ち良かった。
この他にも、10 枚以上聞いたかな。演歌「津軽海峡冬景色」は低音のほとんど入っていない録音だったけれども、こぶしの入った演歌節がよく歌われて、低音が入っていなくても問題ないオーディオ・システムだと思えた。グールドの弾くバッハのフランス組曲は、オーディオ談義中に BGM がわりにかけたのだけど、話の途中に「何だこの素晴らしいメロディーは?」と集中力を持っていかれた。グレゴリオ聖歌は、あまりに美し過ぎてみーさん、ちょっと寝てた。
あとがき
家に帰ってから、みーさんと同じ位いまでボリュームを上げようとしてみた。低音がみーさんほどに引き締まっていないのを実感した。そしてボリュームを上げきる前に勇気が挫けた。無理。うちの部屋では、近所迷惑になってあれほどの音量は出せない。みーさんの環境にちょっと嫉妬した。
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