3 年程前に Primare I30 を買った。以来、ぼくのオーディオ・システムのアンプとして活躍し続けてくれている。本エントリーでは、3 年間 Primare I30 を使った者としての感想を書きたい。なお、大まかなスペックは購入時の過去記事に書いてあるので、そちらを参照して欲しい。
購入前
Primare I30 の音を直接聞いた記憶はない。下位モデルのインテグレーテッド・アンプ Primare I21 と、上位モデルのプリ・アンプ Primare PRE30 / パワー・アンプ Primare A30.2 の音を聞いて、その音に魅了された。
「清涼」な感じの音作りと、高域の鳴りっぷりの良さが良かった。女性ボーカルとクラシック (管弦楽曲) を主に聞いて、満足を覚え Primare I30 の購入を決めた。
エージング
買ったばかりオーディオは、本来の力を発揮しない。少し慣らし運転する必要がある。経年変化を「エージング」と呼ぶけれど、特にオーディオの世界ではオーディオ機器が本来の実力を発揮するまでの作業をエージングと言う。といっても、やることは自分の好きな音楽をかけるだけ。
箱から開けて、セッティングを終えたばかりの Primare I30 は、それはひどい音だった。音はつまっているし、伸びやかさはないし、清涼感など微塵も感じられない。購入判断を誤ったかと、背中に冷や汗が流れた。
4 時間も音楽を鳴らしていると、急に音楽が楽しくなった。弦楽器の響きに艶がのり始めた。合奏も揃って、勢いも出てきた。清涼感もやや増しになってきた。半日ほどで、アンプは期待通りの音を鳴らすまでになった。
その後、2〜3 週間は音楽をかけるたびに、少しずつではあるけれどエージングが進むのが分かった。それからの変化は (毎日聴いてる) ぼくには分からなかった。けれど、時々うちに遊びに来る友達に言わせると「前回より音が良くなった」と言われることが何度かあった。
自分で変化の分かるエージングは 2〜3 週間で。(友達の弁を信じるなら) 最終的なエージングは半年位い、といったところか。
エージング後の音 QUAD 11L 編
全体的にスピード感よりも大らかに聞かせる感じ。オーケストラも弦楽器の鳴りっぷりが良い。女性ボーカルも楽しく聞ける。ピアノも (ブックシェルフ型スピーカーとしては) 沈み込む様な低音から、高音のピアニッシモまでよく鳴ってくれた。特に弦楽器・ピアノは「楽器」が鳴っていることを感じさせてくれて好印象。
購入時に特に気にしていた「清涼感」は、エージングとともに薄れた。なくなりはしない。「清涼感」が出過ぎてバランスが悪かったのが、普通の「清涼感」に落ち着いた感じ。オーディオ・ショップで聞いた過剰な清涼感は、エージング不足も関係していたのかもしれない。
購入後に気がついた点を二つ。一つ目は、中域が厚めに出てくること。二つ目は左右の音の分離感が非常に高いこと。左から鳴る音は左から、右から鳴る音は右から、ハッキリと分かれて聞こえる。この分離感の高さは特筆すべきだと思う。
最後に苦手とする音楽を。専ら、スピードのある音を苦手とする。ジャズのシンバルや打ち込み系の音楽が苦手。これは、スピーカーの QUAD 11L も同様な傾向があるので、相乗効果的に苦手度が高くなっているんだと思う。ぼくはクラシック音楽をメインに聞くので、そこまで気にならない。
フルバランス回路
Primare I30 はフルバランス回路で作られている。難しいことをバッサリ省く (いや、ぼくが良く分かってないだけなんだけど) と、フルバランス回路には XLR 入出力が良いとされている。
CD プレーヤーとアンプを繋ぐケーブルは、大きく分けて RCA ケーブルと XLR ケーブルの二種がある。RCA ケーブルには RCA 端子が、XLR ケーブルには XLR 端子が付いている。ケーブルに差はなくて、端子部分が違うと思っても大きく間違っちゃいない。RCA 端子は、テレビとかの音声入力で普通に使う見なれた端子。XLR 端子は Google 画像検索の結果をどうぞ。
最初に買った CD プレーヤー CEC 3300R は、安い CD プレーヤーにもかかわらずフルバランス回路で、RCA 端子と XLR 端子の両方が付いていた。
そこで 2 万円の RCA ケーブルと、五千円程で自作した XLR ケーブルで音の比較をした。結果は安い XLR ケーブルの方が良かった。RCA ケーブルよりも小さな音が聞こえたし、高音の音も伸びやかに聞こえた。以降、ぼくは Primare I30 の入力を XLR 入力で使うことにしている。
アース端子
見すごされやすいけれど、Primare I30 にはアース端子が付いている。部屋のエアコン・コンセントの下にアース端子が付いていたので、Primare I30 からエアコン下のアース端子へとアースしてやると、音場がやや広がり、音の解像度も少しだけ上がった。
アース・ケーブルは専用のものがあれば良かったけれど、手に入らなかったのでスピーカー・ケーブルで代用した。長さは 4 m。本来、アース・ケーブルは短い方が良いと聞いている。4 m はいかにも長い。長いと、他の電子機器の影響を受けて逆に悪くなる場合もあるそうな。ぼくの場合は運良く、「少し良い方」に結果が出た。近い場所にアース端子があったら、もっと効果があったかもしれない。
エージング後の音 Bösendorfer 編
2008 年末、スピーカーを QUAD 11L から Bösendorfer VC2 に変えた。QUAD 11L は十万円のブックシェルフ型スピーカーで、Primare I30 はこのスピーカーを朗々と鳴らしていた。けれど Bösendorfer VC2 は 160 万円のトールボーイ型スピーカーで、Primare I30 は力不足だった。
スピーカーの質が高いので、音楽の質も当然高くなったけれど、その Bösendorfer を鳴らし切っていない感を強く持った。特に音楽への「力強さ」が出ない気がしてしょうがなかった。
プリアウト
アンプには大きく分けて 3 種ある。プリ・アンプとパワー・アンプ。プリ・アンプとパワー・アンプは単体ではスピーカーを鳴らせなくて、二つを組み合わせて初めて音が出る。プリ・アンプとパワー・アンプを合わせてしまったのがインテグレイテッド・アンプ。Primare I30 はインテグレイテッド・アンプに当たる。
Primare I30 はインテグレイテッド・アンプだけど、プリ・アンプとして使うことも出来る。そのためのプリアウト端子というのが付いている。この端子からパワー・アンプ (別売) に繋げて、アンプのアップグレードを図れるというわけ。
Primare I30 はフルバランス回路なので、プリ・アウト端子も RCA 端子と XLR 端子の両方が付けられるはず。なのだけど、何故か Primare I30 のプリ・アウト端子は RCA しか付いていない。残念。
さて、Primare I30 のプリ・アウト端子の品質だけれども、これは「悪い」。友達のパワー・アンプを繋いだところ、逆に音が悪くなった。定価 60 万円するパワー・アンプを中古で買って、ようやく音が良くなるレベル (力強さは増して、音がキビキビ出る様になった。解像度もアップ)。安いパワー・アンプなら買わない方が良いと思う。
おそらく Primare I30 にとって、プリアウト出力はおまけでしかないんだと思う。「まず最初にパワー・アンプを買って、次にちゃんとしたプリ・アンプを買ってね。それまでの繋ぎとして Primare I30 は使えますよ」的に考えておいて良いと思う。
今のぼくのオーディオは、Primare I30 の力も、Stellavox PW1 の力も、中途半端にしか出せていない状況。といってもお金がないので、プリ・アンプを買うことができない。あと数年はこの構成で我慢して、いずれ、ちゃんとしたプリ・アンプを買おうと思っている。
位相反転スイッチ
Primare I30 には位相反転スイッチがある。このスイッチは XLR 接続する場合にしか使わない。少し横道に逸れるけれど、XLR 端子の説明をする。
XLR 端子の特徴は、3 つのピンがあること。すなわちホット (+)、マイナス (-)、アース用の 3 ピン。困るのは、ホットを 2 番ピンにするか 3 番ピンにするかの統一がされていないこと。一応、1992 年に 2 番ピンがホットにてることが国際標準になったけれど、Luxman や Accuphase のアンプは未だ 3 番ホットを使っている。
Primare I30 は 2 番ホットなので、3 番ホットの CD プレーヤーと繋ぐとおかしなことになる。具体的には、スピーカーの振動板が前に出るべき時に後ろへ下がり、後ろへ下がるべき時に前へ出る。そんな時、この位相反転ボタンを押してあげると問題が解消する。
ぼくが買った Esoteric X-1s は 1991 年の中古製品なので、まだ国際規格が決まっていなかった。そして不幸なことに、当時の Esoteric は 3 番ホットだった (今の Esoteric は 2 番ホット)。Primare I30 の位相反転ボタンが活躍している。
インシュレーターについて
ぼくは今、Primare I30 にインシュレーターを付けていない。ラックに Quadraspire Q4D Vent を導入してから、インシュレーターの類を必要としなくなった。
下手にインシュレーターを買い漁るより、良質のオーディオ・ラックを購入する方が良いと思う。
あとがき
Primare I30 は良いアンプだと思う。クラシック音楽全般を過不足なく鳴らしてくれる (ぼくがクラシック以外聞かないので、他のジャンルについては明言を避けるけれど...)。一点、プリアンプ出力のみ不満が残るけれど、Primare I30 単体を考えれば文句はほとんどない。
Primare I30 が向かなさそうな人達をあげておく。スピード感を求める人達、モニター調のカッチリした音を望む人達には合わない。ジャズやテクノ系も合わないかもしれない。暖色系のアンプを求める人達にも合わないかもしれないけれど、もしかしたら「暖色系が好き」というのは勘違いかもしれないので、一度は聞いてみることをお勧めする。
最後に、音楽を楽しく聞きたい、という人にはおススメ。ちなみにぼくの今のシステムでは、クラシック音楽全般に加えて、マイケル・ジャクソンが楽しく鳴っている。
現在のシステム
- CD プレーヤー: Esoteric X-1s
- プリアンプ: Primare I30
- パワーアンプ: Stellavox PW1
- スピーカー: Bösendorfer VC2
ラックは Quadraspire Q4D Vent、CDプレーヤー・プリアンプ間のケーブルは Jorma Design XLR No.2、プリアンプ・パワーアンプ間のケーブルは Jorma Design RCA No.2、スピーカー・ケーブルは Zonotone 7NSP-Grandio 07。
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