2010-11-02

Bösendorfer スピーカーの現在

2008 年の末、ぼくは Bösendorfer VC2 というスピーカーを買った。かなり高い買い物だったが仕方がなかった。というのも、Bösendorfer というオーディオ・ブランド自体が無くなってしまうという情報を手にしていたため。

Bösendorfer VC2

写真は、今、ぼくの部屋に入っている Bösendorfer VC2 (色はポメーレという特別色)。ちなみに VC は Vienna Classic の略とのこと。

Bösendorfer スピーカーの現在

現在、Bösendorfer スピーカーは Brodmann スピーカーとして発売が続けられている (国内への輸入代理店は現在ない模様)。

ここで、Bösendorfer と Brodmann、そして Bösendorfer スピーカー開発者の Hans Deutsch の話をしないといけないでせう。

1805 年、Joseph Brodmann はピアノ・メーカーを創業する。Brodmann のピアノはベートーヴェンやウェーバーの家に納められたという。その Brodmann の会社に若き Ignatz Bösendorfer が入社した。Ignatz Bösendorfer は 1828 年に独立、「Bösendorfer」の名を冠したピアノ・メーカーを創業。Bösendorfer スピーカーは、リストの賛辞を受け名を馳せてゆく (当時、リストはコンサートでピアノを何台も壊していたが、Bösendorfer だけは壊れなかったため喜ばれたらしい)。そして現在、ベーゼンドルファーはスタンウェイ、ベヒシュタインと並ぶ三大ピアノ・メーカーとなった。一方、Brodmann のピアノ・メーカーは一世紀以上前にピアノ作りを止めている。

Bösendorfer は高級ピアノを売るが、安いピアノを作らなかった。そこで、2000 年を越えた頃、廉価ブランドを作るプロジェクトがスタートした。この試みは中止されるが、その過程で現在の Brodmann ピアノ・メーカーが生まれる。Brodmann ピアノには Bösendorfer の元職人も深く関わっているらしい。

話変わって 2000 年頃、Bösendorfer は音響学者 Hans Deutsch 氏を招いてスピーカー作成に乗り出す。Deutsch 氏はカラヤンにも認められた音響学者で、ホーン・レゾネーターという特許を 1982 年に取得している。ホーン・レゾネーター特許を使ったスピーカーはいくつかのメーカーで採用され実積を出したらしい (国内に輸入されたかどうかは不明)。Bösendorfer に招かれた Deutsch 氏は第二世代ホーン・レゾネーター (HornResonetor with Acoustic Sound Boards) の特許を取得する。Bösendorfer のスピーカーは Deutsch 氏の特許をライセンス提供される形で作成された。しかし、2008 年 Bösendorfer と Deutsch 氏の蜜月は終わりを迎える。Bösendorfer を買収したヤマハがオーディオ (スピーカー) 部門を閉じてしまった。

その後、Deutsch 氏は特許を携えて Brodmann に移った。そして、Brodmann スピーカーとして Bösendorfer と同じスピーカーを作り続けている。Deutsch 氏曰く、「Bösendorfer は二スを 4 層塗りしていたけど、Brodmann は 6 層塗りだから、もっと音が良いよ」とのこと。嘘のような話だけど、スピーカーに積もった薄いホコリを取るだけで響きが良くなるほど箱を鳴らして音を出すスピーカーなので、あながち本当なのかもしれない。

あとがき

この子はとてもスピーカー・セッティングがシビアで、鳴らしづらい。購入して一年経つけれど、未だスピーカーの位置決めだけで何時間も費やしている。下手な場所に置くと、「ピアノしか良く鳴らない」スピーカーに堕ちてしまう。でも、ちゃんとセッティングするとマイケル・ジャクソンもガンガン鳴らすスピーカーに変貌する。Deutsch 氏は「ピアノは弦楽器だ」という考えの持ち主なので、ヴァイオリンもオーケストラも美しく鳴る。

国内に Brodmann スピーカーが輸入されて、その魅力を知る人が増えて欲しいと願う。

ref

現在のシステム

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