2010-11-14

トールボーイ・スピーカー PMC FB1i-Signature を聞いてきた

イギリスのスピーカー・メーカー PMC から 10 周年記念モデルとしてスピーカーが発売される。その試聴会があったので、昨日、行って音を聞いてきた。といっても、行ったら試聴会がちょうど終わったところだったので、誰も観客の居ない試聴室の中、販売員の方と一対一でじっくりと音を聞かせてもらった。

システム構成

今回聞かせてもらったのは、PMC FB1i-Signature。限定発売で、価格は税込 477,750 円。50 万円台のスピーカーと考えれば良いでせう。FB1i-Signuture はトールボーイ・スピーカー PMC FB1i をベースにブラッシュアップをかけた記念モデルとなる。

FB1i-Signature and TB2i-Signature

写真右が FB1i-Signature。ちなみに左はブックシェルフ・タイプの TB2i-Signature (257,250 円)。

システム構成は以下の通り:

  • CD プレーヤー: Esoteric K-03
  • プリ・アンプ: Luxmann C-600f
  • パワー・アンプ: Luxmann M-600A
  • スピーカー: PCM FB1i-Signature

レビュー

3 枚のアルバムから一曲ずつ聞かせてもらった。

Timeless

一曲目は FAKiE の Timeless (See my review) から「Fastasy」。FAKiE はギターとボーカルの二人組ユニット。ボーカルは力強く、聞いていて楽しい。ギターの音色は味つけがなく、響きも多すぎ少なすぎずで良かった。ボーカルとギターのユニゾンが見事に混ざった楽しい演奏を聞くことができた。全体的にスピード感のある再生で、好感が持てた。

モーツァルト : アイネ・クライネ・ナハトムジーク&3つのディヴェルティメント

二曲目はトン・コープマン指揮アムステルダム・バロック管弦楽団の演奏でモーツァルトの「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」。響きが多めなこの CD だけど、過剰になりすぎないヴァイオリンを聞けた。低弦 (チェロやコントラバス) の旋律がしっかりと聞こえたのが好感触。ティンパニーの低音はやや遅く聞こえて、高域とのバランスを欠く様に感じたが、この件については後述する。

スピーカーは、少し後方にオーケストラが並ぶ様に定位する「音場 (おんじょう)」型と、定位よりも一つ一つの音の勢いを大切にする「音像」型に大きく分けられる (音場型と音像型の説明は適当なので、詳しく知りたければググッて下さい)。FB1i-Signature は音像タイプのスピーカー。音の定位はそれほど明確には描き出さない。ただし、説明員云く、スピーカーの内振り角度を調整することで定位感は上がるとのこと。今回の試聴でも、定位が悪いとは感じなかった。むしろ、音が左右の音像定位だけでなく「上下」の音像定位が見られて良かった。

上下の音像定位について補足説明しておく。この CD はおそらく教会か高さのあるコンサート・ホールで録音されたもので、そういう場所で演奏すれば当然音が上の方へ昇っていく。ヴァイオリンの響きが上へ昇りフ〜ッと消えてゆく様は、聞いていてとても心を打つ。FB1i-Signature では、その音が上に向かってゆく様を聞き取れた。これはスピーカーが良いおかげもあるけれど、CD プレーヤー Esoteric K-03 の力も大きいかもしれない。

ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第5番「皇帝」/ピアノ・ソナタ第17番「テンペスト」

三曲目はフリードリヒ・グルダ (ピアノ)、ホルスト・シュタイン指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団によるベートーヴェンのピアノ協奏曲第 5 番「皇帝」第一楽章を聞いた。グルダのピアノが少し軽めに聞こえた。もう少し線の太いピアノをグルダは弾いていた様に思うけれど、もしかしたらこの時のグルダは線が細めな演奏をしていたのかもしれない。ピアノの音の判断は今一つちゃんとできなかった。

管弦楽団は、先のアイネ・クライネ・ナハトムジークより規模が大きくなっているが、その大きさに破綻することもなく、悠々と鳴っていた。ここでも、低弦の音階が聞こえるほど明快な低音の出方に、素晴らしいと思った。

歓談を交えて

最後に販売員の方がカーペンターズの CD をかけて下さった。サ行の音が耳につくスピーカーがある中、PMC のスピーカーはそういうことがない、と説明。かけた曲は特にサ行の音が入っている曲とのこと。確かにサ行の音のきつさを感じず、音楽を楽しく聞けた。

オリジナルの PMC FB1i と違いについても聞いてみた。FB1i-Signature は FB1i に比べて、中域に力を持たせ、よりソフトな音作りになっているとのこと。また FB1i に追加の工夫を凝らしているのに、定価の上昇を極力抑えたことも強調されておられた。

最後に低域の遅れについた尋ねた。アイネ・クライネ・ナハトムジークでティンパニーの音が遅く感じたというアレ。ぼくはこの「遅さ」の原因は、FB1i-Signature の作りにあるんじゃなくて、エージング不足にあるんじゃないかと思った。それでエージング時間を聞いてみたというわけ。で、FB1i-Signature は比較的エージングに時間のかかるスピーカーだけど、今回の実機は 20 時間程のエージングしかしていないとの答えをもらった。

こんな話をしているうちにカーペンターズの CD は三曲目に突入していた。一曲目では低域が弱く遅く感じたけれど、三曲目に達する頃にはそういう感じがかなり無くなっていた。それだけでなく、カレンの歌声もニュアンスが良く出るようになり、周りのバンドの音もより觧明に聞こえる様になっていた。今回、ぼくが聞いた FB1i-Signature の音は、まだまだ実力を発揮していなかったことを思い知った。

帰る前に、スピーカーの裏側に回ってみた。バイワイヤリング端子にシングルのスピーカー・ケーブルを突っ込んで、付属のジャンパーを使っていた。これだと、どんなに良いスピーカー・ケーブルを使っても高低域のバランスが「最良」にはならないよねぇ。せっかくのバイワイヤリング端子なんだから、バイワイヤーのスピーカー・ケーブルを使ってあげなくちゃ。。。そんなわけで、更に強く FB1i-Signature の「可能性」を覗いた気がした。

2 comments:

  1. 仲々耳の良い方だと思いました。 トランスミッションラインはバスレフと同じで共鳴型ですからグループディレイ値が低域では大きくなります。低域が遅れて聞こえるのはそのせい。

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