AMN のキャンペーンで、COURRiER Japon 10 月号と「バイラル・ループ」を献本頂いた。丁度この時期、最も体調を崩していたので、読み終わるのがこんなに遅くなってしまった。遅ればせながら、レビューを書く (バイラル・ループについては次エントリーにて)。
概要
COURRiER Japon は日本の月刊誌。定価 780 円。毎月 25 日発売。
COURRiER Japon
「クーリエ・ジャポン (COURRiER Japon)」、「日本」が「Japan」ではなく「Japon」と表記されていることから分かるやうに英語圏の雑誌ではない。もとになっているのは、フランスの週刊誌「クーリエ・アンテルナショナル (Courrier international)」。クーリエ・ジャポンはこの「クーリエ・アンテルナショナル」と提携して記事を日本向けに翻訳・編集している。また、一部の記事はクーリエ・ジャポン編集部オリジナルの寄稿文だったりする。
「クーリエ・アンテルナショナル」は 1990 年創刊。フランスの国際ニュース週刊誌として有名らしい。同誌の編集方針は世界 1500 を越えるメディアの中から記事を選んで、一つの雑誌として編纂し直すこと。この編纂能力の高さが群を抜いている (日本語版とオリジナル・フランス版でどの程度「編纂」に差があるのか分からないけれど)。
例えば、今回献本してもらった 10 月号の特集は「"知の世界標準" が 1 日で分かる! 最強の講師陣に学ぶ『世界一の集中講義』」だった。その内容は以下の通り:
- 1 限目 -- 学働心理学ゼミ: 人のやる気を引き出すには「アメとムチ」はもう古い
- 2 限目 -- 問題解決基礎論: ありとあらゆる問題に共通する「解決への糸口」を教えよう
- 3 限目 -- 情報技術各論: 「IT 音痴」なんて言い訳が通じる時代はもう終わった
- 4 限目 -- 神経経済学: 脳内ホルモンを操る企業が SNS 全盛時代を勝ち残る
- ランチタイム -- 食習慣改善: 米国人の体の大部分はトウモロコシでできている
- 5 限目 -- 歴史実験学概論: 世界の構造を把握するには歴史を統計的視点で見ればいい
- 6 限目 -- ゲーム理論入門: 正確なデータさえあれば 90% の確率で未来予測は可能
- 放課後 -- 教授宅訪問: クルーグマン教授が語る「ノーベル賞までの道」
注目すべきは、この特集が一つの雑誌から転載されたものではないこと。講義ごとに別々の雑誌から記事がピックアップされている。具体的に雑誌名を挙げてみやう: 1 限目はクーリエ・ジャポン自身によるインタビュー記事、2 限目は「ファスト・カンパニー [米]」、3 限目は複数の雑誌からの書評集 (オンライン・メディア・デイリー [米]、ガーディアン [英]、ワイアード [米]、ニューヨーク・タイムズ [米])、4 限目も「ファスト・カンパニー」、ランチタイムは「フィナンシャル・タイムズ [英]」、5 限目は「ニュー・サイエンティスト [英]」、6 限目も「ニュー・サイエンティスト」、そして放課後は「ニューヨーカー [米]」。これら複数の雑誌の記事をまとめて一つの特集としてまとめ直すことは、並大低の編集能力ではない。しかも 6 限目のゲーム理論入門は、原文が三人称で書かれていたところを、特集の統一感を出すために一人称に書き直す手の入れよう (もちろん、内容に改変はない)。
また、一つの記事ごとに作者の著書が紹介され、より深く知りたい人は本が読みたくなるよう構成されている。オリジナルの記事が著書紹介をしていたじゃなくて、おそらく Courrier 編集部が記事に合わせて著書紹介文を書いているんだと思う。
特集を読んでると、続けて本も読みたくなってしまうのは何故かな? 文章の上手さゆえ? 一限目で紹介された「モチベーション 3.0」とか、ランチタイムで紹介された「フード・ルール」なんかはつい Amazon のボタンをポチッと押してしまいそう。4 限目で紹介された「バイラル・ループ」は今回の献本キャンペーンで送られてきたので、次エントリーで感想を書く。
まあ、特集一つとってもこんな具合。世界時事を集めたコーナーは、中東・ヨーロッパ・アフリカ・北中南米と地域分けされて地域の偏りがない。「世界から見た日本」というコーナーも「環球財経 [中]」、「ニューヨーク・タイムズ [米]」、「イズベスチヤ [露]」、「ル・モンド [仏]」と複数の国からの視点をまとめてある (ル・モンドのラーメン特集は日本人として頷けないものがあるけれど ^^;)。
COURRiER Japon の売りは、特集や時事コーナーになるんでせうけど、単発の記事も負けてない。特集と同じ位い面白いと思ったのは「マイル獲得こそわが人生! 嗚呼、僕は『マイレージ中毒』」 (アメリカン航空で年間 5 万マイル飛んだ顧客に与えられるプラチナ・メンバー資格を、3 か月で 1 万マイル飛ぶと得られるエピソードが良かった)。エティケタ・ネグラという雑誌から選ばれた記事で、ナントこの雑誌、ペルーで発刊されている。全く、どれだけ沢山の雑誌を読んでいるのか!! 冒頭でも書いた、「1500 を越えるメディア」が伊達でないことが良く分かる。
「寄せ集め」を寄せ集めと感じさせない。むしろ、寄せ集めることによって、地域・文化の壁を越えている。それでいて、なお、統一感を生んでいる。素晴らしい!!
COURRiER Japon (クーリエ ジャポン) 2010年 10月号 [雑誌]
あとがき
クーリエ・ジャポンには、フィード・リーダーに近いものを感じた。好きなブログをピックアップして、自分専用のニュース・ソースを作る作業は、クーリエの編集部がやっていることに近い。
もちろん、クーリエにはフィード・リーダーのやうな「パーソナライズ」要素がない。それは弱みであり強みでもある。
これはぼくの思いだけれども、フィードリーダーも、ブログの登録数が 100 を越えないうちはパーソナライズ・ニュース・ソースとしての質が高かった。けれど、数が増えるに従って相対的な質が下がっていった。500 を越えると、読むことに追われる日々が始まる。そして、自分のフィード・リーダーがあまりに「自分向けに」パーソナライズドされていることに気がついた。
他に目を向ける必要がある。
でも、既存のメディア (新聞・週刊誌・Google News etc.) は肌に合わなかった。新聞は毎日読まなきゃいけないので、フィードリーダーと併せて読むには量が多すぎるし、ウィットさに欠ける。おまけに国内の記事ばかり。週刊誌では、これと言ったものがない。テーマが偏り過ぎている。ぼくはもっと網羅的なものが欲しい。Google News は最新の記事を追うには良いけれど、週末・月末にさらりと読むには向いていない。
クーリエ・ジャポンは、正にその隙間を埋めてくれる存在のように思う。クーリエはパーソナライズされていない。むしろ世界中に目を向けて情報を集めている。今、ぼくに必要なのはそういうフィードリーダーとクーリエ (のような) 二つの存在なのかもしれない。
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