2010-10-07

CEATEC 2010 -- 残念なオーディオ勢の衰退

CEATEC に行ったら楽しみしていることがある。オーディオ・メーカーの試聴室で、最新のオーディオ・システムの音を聞くこと。一日中歩き回りっぱなしな CEATEC にあって、30 分でもゆっくり座って音楽が聞けるのって、音楽好きとしてはたまらない。

ところが、今年の CEATEC はオーディオ勢がおしなべて弱かった。

今まで特別の試聴室を用意していた Pioneer や Victor は試聴室がなかった。それどころか、Victor、Kenwood (今は JVC Kenwood ホールディングスか?)、Bose はブースすら出していなかった。今年は 3D テレビに全くお株を奪われてしまった感じ。オーディオをネット経由で楽しめる DLNA も、iPhone(Remote) + iTunes の前にかすんだ感がある。実際、ブースも小さかったし。オーディオ好きとしては、少々残念な CEATEC であった。

といっても収穫は 2 つあった。いずれもスリム型スピーカーなのが面白いところ。簡単に紹介しませう。

Pioneer のスリム・スピーカー

Slim Speaker at Pioneer Booth

Pioneer が試作段階のスリム・スピーカー。普通のスピーカーは音を出すのに、スピーカー・ユニットを持つため、どうしても厚みが出てしまう。このスリム・スピーカーは一般に言うスピーカー・ユニットを二つの部分に分解する。音を出す部分とアンプから受け取った電力を動きに変換する部分の 2 つの部分。それはまるで車のピストン機構のやう。詳しくは下の写真を参照されたし。

Slim Speaker の機構説明 at Pioneer Booth

ヤマハの TLF スピーカー

Cloth Speaker at Yamaha Booth

ヤマハは更に面白いスピーカーを出してきた。写真に見える左右の幕。これがスピーカー。布がスピーカーになっているので、その上にプリントを施すことができるし、材質が布なので丸めることもできる。音質は決して HiFi ではないけれど、イベント会場や特設会場でちょっと音を出したい人達には魅力的な商品になりそう。

また、平面型スピーカーの特徴として、音の直進性が高いことにも注意したい。つまり、普通のスピーカーはスピーカーの前に立たなくても音が聞こえる。でも、この TLF スピーカーはスピーカーの前に立たないと音が聞こえない。正確には、少しずつ音は広がっていくんだけど、普通のスピーカーと比べるとその広がり方が非常に小さい。これを長所と促えてイベント会場などで使うと、喧騒の中でも特定の人にだけ音楽を届けることができたりする。

TLF スピーカーのアイデアは、昔から知られているコンデンサー型スピーカー (QUAD の ESL スピーカーが有名) を布の上でやってしまったこと。QUAD の ESL スピーカーは、ぼくの大好きなスピーカーの一つで、クラシック音楽を素晴らしく鳴らしてくれるスピーカーとして一目を置いている。ところが、同様の原理を使っているにもかかわらず、逆にクラシック音楽には不向きで全く別の用途に使えるスピーカーが出来てしまう。技術って面白い。

あとがき

今回の CEATEC では、音楽を楽しむよりも、別の用途に目を向けた製品が多かった。それはそれで楽しかったけど、来年は高音質なオーディオをメーカーから出して欲しいと、一オーディオ・ファンとして思った。

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