2012-11-02 (金)、東京インターナショナル・オーディオ・ショーに行ってきた。昨年、ぼくの心を震わせたオーディオ・メーカー B. M. C. の音を聞き、開発者の Carlos Candeias 氏と話をしてきた。
- clmemo@aka: B.M.C. Audio の音にワクワクした (2011 年のレビュー)
- B.M.C. Audio – High End Audio Components - B.M.C. Audio
- BMC in Axiss
音楽を聴く
まず会場入りして、いの一番に Axiss のブースを訪ねる。「今日、B.M.C. の試聴会はあるのか?」「Mr. Candeias は来ているのか?」。答えは両方ともイエス。14:30 から一時間、B.M.C. のための時間があると聞き出した。それまでは、他社のブースを巡る。14 時頃に Axiss のブースへ。丁度、B.M.C. の前の試聴会が終わったところだった。
B.M.C. の試聴会で使われた機器は以下の通り。
- CD トランスポート: B.M.C. BDCD 1.1
- DAC: B.M.C. Dac1Pre
- パワー・アンプ: B.M.C. AMP CS2
- スピーカー: Wilson Audio Sphia 3
- ケーブル: Transparent
席は 2 列目の中央に陣取った。
オーディオ機器はほぼ去年と同じ。パワー・アンプがモノラル・パワー・アンプの B.M.C. M1 からステレオ・インテグレーテッド・アンプの B.M.C. CS2 (新製品) に変わっていた。
音楽は Axiss が用意した CD と、Candeias 氏が用意した PC 音源。まずはボーカルやクラシック曲を聴く。印象は以前と変わらない。去年一度聴いているので、より冷静に音を聴くことができたのではないかと思う。スピード感のある音。フレッシュなサウンドは相変わらず。自然な音場が展開される。ヴァイオリンの音がやや艶に欠ける。低域の弦は良いのだけど、ドラム系の低音は少しキレが足りない。試聴会後、ブースの後ろの方で聴こえてきたヴァイオリンの音に不満を感じなかったので、リスニング・ポジションが悪かったのかもしれない。直接音ばかり聞いていたのでは? というのは一緒に音楽を聴いたばーそんさんの説明。
続けて、Candeias 氏の PC 音源を聴く。Candeias 氏曰く、CD の音は (特に古い録音は) あまり良くないよね。マスタリングが昔向けなんだよね。今は、そういうのを直すことができる様になった。だから自分で直しちゃったよ。
ン? 自分でリマスタリングしたってこと?! ソースが CD なのかマスター音源なのか分からないけど、やっちゃったらしい。昔、ぼくが B.M.C. の音に感動したと言ったら、オーディオに詳しい人が助言してくれた。「ドイツのオーディオはやばいよ。ドイツ人のエンジニアって限界ギリギリまでやるんだ。他の国の人は越えない一線を越えちゃうんだ。だから、ドイツのオーディオは、ギリギリにチューンされた F1 カーを扱うくらいの気概がないと扱いきれないよ」。その言葉の意味が分かった。かかったのはマリア・カラスのカルメン。ノックダウンした。リアリティーが段違いだった。今までの CD の音が霞んだ。
ぼくの隣に座るばーそんさんはブルーズの愛聴者。SOULNOTE の代表・鈴木哲さんが試聴会でこうおっしゃった。「ハイ・エンド・オーディオで鳴らすのが難しいのは 50,60 年代のロック。音楽が持ってる荒々しさも、滑かにしてしまう」。これにばーそんさんは「ブルーズの方が難しいですよ」と言ったら、「ブルーズは誰も聴かないから」。そして二人は笑った。鈴木さんもばーそんさんもブルーズが好き。けど、ブルーズを聴く絶対数は少ない。だから、試聴会ではあえてブルーズについて言及はしなかった。そういった事情を二人して笑っていた。
Candeias 氏がマリア・カラスの次にかけると言ったのはブルーズだった。この時、ばーそんさんは自分の耳を疑ったという。音楽がかかるまで、自分の耳を信じることができなかったと。そして一聴。ブルーズだと認識した。やや透明感のあるブルーズだったけれど、今までぼくが聴いたブルーズでも群を抜いていた。ぼくは初めて、ばーそんさんがブルーズの曲を (自宅のシステム以外で) 聴いて「ありえない」という風情で頭を抱えるのを見た。
Candeias 氏とのお話
試聴会の後、Candeias 氏に会いに行った。「Do you remember me?」と問うぼくに、ブログを書いてくれた人だよね、と答えてくれた。覚えてもらっていて、ちょっと感動。いくつか質問させて欲しい、とお願いしてブースの入口付近へ移動。
B.M.C. AMP M2
大きく宣伝してなかったけど、モノラル・パワーアンプがバージョン・アップしていた。B.M.C. AMP M2。前モデル M1 との違いは何かと聞いた。Candeias 氏の答えはこう。
「音が良くなったよ。CS2 を聴いたかい? あれはインテグレーテッド・アンプにもなるし、パワー・アンプにもなる。C1 を持ってる人はインテグレーテッド・アンプとしてしか使えなかった。S1 を持ってる人はパワー・アンプとしてしか使えなかった。CS2 は 2 つの機能を合わせたんだ。インテグレーテッド・アンプとしても使えるし、パワー・アンプとしても使える。B.M.C. の DAC と繋げば自動的に電流伝送のパワー・アンプになるよ。CS2 は M1 より音が良いんだ。その技術を M2 にもフィードバックさせているよ」
ぼくの英会話能力が正しければ、そう言った。ぼくは「That's great」としか答えられなかった。
B.M.C. ARCADIA
B.M.C. はスピーカーも発売した (CD プレーヤー、DAC、フォノイコ、スピーカーを作る上にリマスタリングまで手がけるなんて、マルチ・タレント過ぎる!!)。Axiss の人に聴くと、現在、このスピーカーを輸入する予定はないとのこと。
このスピーカー、写真を見ると、側面にスピーカーが付いている。サイド・ウーファー。ぼくの使っている Bösendorfer スピーカーと同じ。興味を引く。日本にサイド・ウーファーのスピーカーは少ないからね。輸入されないとしても、開発者の人と話が出来るのはありがたい。
さて、写真には当然片面しか写らない。このスピーカーのサイド・ウーファーは片側だけなのか? それとも両面に付いているのか? あと、説明を読んでもよく分からないことがある。説明文にはバイポーラー・スピーカーとか書いてあって、ツイーター 2 つ、スコーカー 4 つとか書いてある。おいおい、それじゃあ、スピーカーの後ろにもスピーカー・ユニットが付いてることになっちゃうよ。説明文間違ってるよ... なんて思ってた。
その疑問を Candeias 氏にぶつけてみると、
「このスピーカーは両面サイド・ウーファーだよ。バイポール型のスピーカーでね。後ろにもツイーターが付いてるよ。こうしてやると、臨場感がとても良く出るんだ」
うん。ベーゼンドルファーを使ってるから知ってる。サイド・ウーファーを適切にスピーカー・セッティングすると、臨場感が素晴らしいね。でも、後ろにもスピーカー・ユニットって... どれだけスピーカー・セッティングがシビアになるのか!! 上手くセッティングした時の音は素晴らしいでせう。「ドイツ人は限界ギリギリまでやる」。そんな言葉を思い出した。
日本に輸入して、果たして何人がこのスピーカーをちゃんと鳴らせるか? でも、怖いもの見たさに Axiss さんには輸入をして欲しいとも思う。
CD メカについて
B.M.C. の CD トランスポート (及び CD プレーヤー) はベルト・ドライブを使っている。ベルト・ドライブの CD プレーヤーというと、C.E.C. が作っているのを知っているくらい。Candeias 氏は C.E.C. の開発にかかわっていたので、この CD メカは C.E.C. の OEM 提供かと聞いた。というのも、もし OEM 提供なら C.E.C. が提供を止めたら CD プレーヤーの製造も出来なくなっちゃうから。
答えはノー。メカも B.M.C. の自社開発。
これは嬉しい。ぼくは CD の数が多いから、(たとえ将来、PC オーディオに移行したとしても) 沢山ある CD ライブラリーをなるべく聴き続けたい。メカも自社開発しているなら、外部からの影響で CD 開発が止まることはない (B.M.C. 自身が CD プレーヤーの開発を止めない限りね)。
新シリーズ予告
参考出品で DAC が出ていた。スーパーリンクなし。ヘッドフォン端子あり。XLR/RCA 出力あり。B.M.C. のパワー・アンプと電流伝送で接続可能。
まだ正式には決まっていないので、あくまで参考情報だけども、若者向けに値段を下げたシリーズを出すとのこと。アンプ、フォノイコも開発中。発売は 2013 年 3 月を予定。気になる DAC の値段は 15 万円以下!! 言葉を失うね。
そして背面に見える USB 端子。青いの。
Candeias 氏に聴く。もしかして USB 3.0 端子? 「Yes!」 USB 3.0 のオーディオ規格は決まっていないので、USB 2.0 の Asynchronous Audio 規格を使うよ、とのこと。初めて USB 3.0 を積んだ DAC を見た。そんな Candeias 氏が使うタブレットに入っているのは Arch Linux。いやいやいやいや。
あとがき
B.M.C.。去年は音の素晴らしさに耳を奪われ、ユニークな技術に目を引かれた。今年は (去年、音を聴いているので) 音について感動は去年ほどではなかった。でも、今年の方が心を掴まれた。
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