2010-10-14

オーディオ・オフ会 けろさん邸訪問

最近、Twitter で知り合ったkerberos104さんこと「けろちゃん」さん (以下 けろさん) がオーディオも滅法強いということで、2010-10-10 (日) にお宅を訪問して音を聞いてきた。

けろさんのオーディオ・システム

家へ上がって、アイス・コーヒーを頂きながらオーディオ・システムの説明をしてもらった。説明の間、けろさんはグレン・グールドの弾くバッハのパルティータをかけて下さった。美しい音楽の調べに耳を傾けながらの機器解説。とても心がなごむ。

けろさん邸 ラック

CD システムの概要は以下の通り:

  • CD プレーヤー: Marantz SA8400
  • DAC: Soulnote dc1.0
  • プリ・アンプ: Kryna L502
  • パワー・アンプ: Kryna (Krypton) M502 (真空管アンプ)
  • スピーカー: Kryna HDA35 + muRata ES105A

CD プレーヤー周り以外は Kryna ブランドで固められている。Kryna はマグネシウム系のオーディオ・アクセサリーで有名な日本のブランド。大手のオーディオ屋さんなら、大低あつかいがある。ただし、Kryna ブランド自身が CD プレーヤーからスピーカーまでオーディオ・システム全部を作っていることはあまり知られていない。というのもオーディオ・システムそのものはほとんどの店で扱われていないため。Kryna のオーディオ・システムは、Kryna のショールーム兼ストアである PLUTON で試聴することができる。

ちなみに、パワー・アンプの項に「Krypton」とあるのは、Kryna の前ブランド名が Krypton だったため。けろさんは、M502 を Krypton 時代に買ったそうな (実は、KRIPTON というオーディオ・ブランドが他にある。おそらくそのブランド名との混乱を避けたかったものと推察する)。

試聴タイム

音楽を聴くのは楽しいもの。最初の方はメモを取りながら聞いていたけれど、途中からは音楽に没頭してしまった。

まず最初に、音量を大きくして第一楽章からグールドの弾くバッハのパルティータを。続いて同じ音源を LP で再生してもらった。CD から LP に音源を変えたとたん、音が生き生きしてびっくりした。CD と LP の違いについては後述。

次にぼくの持ってきていた CD でパルティータを聞く。演奏者はギーゼキング。ぼくにとってはお馴染みの CD なのだけど、中域の音の澄み具合が半端ない。大して音量を上げているわけでもないのに、音がフッとぼくの胸の中に納まる感じで飛んで来た。

次はけろさんのターン。Bob James & Earl Klugh のアルバム「One on One」から。これはけろさんのオーディオ・テスト用ソースとのこと。初めて聞く音楽 (しかもジャズ) なので、ついてゆけず。

代わりに、マイケル・ジャクソンの曲を二曲ほどかけさせてもらった。「History」から「Billie Jean」と「Heal the World」。けろさん邸のスピーカーはトールボーイ・タイプ。けろさん曰く、「昔みたいに大きな口径のスピーカー・ユニットを使わなくても十分な低音が出るでしょう」とのこと。確かに低音の量感は申し分ない。ただし、ぼくは大口径でガンガン鳴らしてた時代を知らないので、比較の仕様がない。ぼくに言えるのは、けろさん邸のスピーカーはぼくにとっては十分な低音が出ている、というよりむしろ量感が出すぎているんじゃないかしら? ということ。ぼくの好みは、もう少しスリムな低域・低音。

けろさん邸 スピーカー

ここからノートを取らなくなったので、記憶があいまいになる。確か、「タイタニック」のサントラから Celine Dion の歌う「My Heart Will Go On」を、Julie London のボーカルで「Fly Me to the Moon」を、同じく Julie London のボーカルで「Besame Mucho」を聞いた。どれもボーカルが力強くて沁みた。他にも聞いたかもしれないけれど、忘却の彼方。

最後にルドルフ・ゼルキンと小澤征爾 & ボストン交響楽団によるベートーヴェンのピアノ協奏曲第 5 番「皇帝」を聞いた。ピアノの音がまた素晴らしい。一方で、オーケストラのヴァイオリンの音が伸びていないやうに感じた。

LP と CD

けろさんは CD よりも LP をお好きとのこと。LP プレーヤーにお金をかけるので LP の音が良くなり、LP を沢山購入するからもっと LP プレーヤーの質を上げやうとする。そんな正のスパイラルに入っているやうに見える。そんなけろさんの LP プレーヤーは次の構成になっている

  • LP プレーヤー: Linn LP12 (改: サブシーャーシをニュージーランドの CETECH 製に変更)
  • トーンアーム: EKOS のマグネシウム・アーム
  • カートリッジ: マイソニック・ラボ Eminent (シェル・リード線にはゾノトーン)
  • シート: foQ
  • MC トランス: マイソニック・ラボ Stage302
  • 電源トランス: マシスト・デザイン
  • フォノ・ケーブル: エソテリック
  • フォノ・イコライザー: プリアンプに内蔵

けろさん邸 Linn LP12 改

けろさんは、ただでさえ評価の高い LP プレーヤー Linn LP12 に手を加えて改造してらっしゃる。この説明は、LP プレーヤーを持たないぼくには全く歯が立たないところだけれども、幸運にもけろさん自身がブログのエントリーを書いて下さっている。LP プレーヤーに興味をお持ちの方は、そちらのエントリーをどうぞ。

LP で聞いたディスクは、グールドのパルティータ、「One on One」、「Fly Me to the Moon」、そしてゼルキンと小澤のベートーヴェンのピアノ協奏曲第 5 番。

このうち、グールドのパルティータだけ CD 盤と LP 盤の両方を聞かせて頂いた。音の違いについて、少し書いてみたい。

けろさんがお持ちの LP 盤は国内盤とのことだけれども (普通、国内盤は音が悪い)、CD 盤と比べると、低域がグッと伸びる。ピアノの中域が力強く華やかになる。そして、レコーディングしているその場の空気感がとても良く表現される。この音を聞いてしまうと、CD に戻れなくなるのも分かる気がする。

とはいえ、この CD と LP の比較試聴は不公平な点がある。それは CD プレーヤーが DAC を含めても 30 万円強にしかならないのに比べて、LP プレーヤーはどう低く見積もっても定価で 100 万円を越えること。LP 優利な条件での比較であった。

オーディオ・システムの感想

まず、非常にバランスの良いシステムだと思った。音像が中央に定位し、左右の音のバランスが丁度良い。当たり前のやうに聞こえるけれど、システムが高価になればなるほど、こういうことが難しくなる。現に、ぼくは今、このバランスに苦労している。当たり前のことを当たり前に出来ていることに唸らざるをえない。

音は中域が特に素晴らしく透明感があった。一方で、高域は伸びきらず、低域は量感こそあるものの少しダブついている感じがした。最後に一点。システム全体のスピードが速い点も良かった。

高域の伸びについては、特に「ピアノ協奏曲 第 5 番 皇帝」を聞いていて感じた。原因は、スピーカー周りに空間がないことだと思う。スピーカーが、まるでスタジオ・スピーカーのやうにラックとテレビの間に納まっている。もう少し空間が欲しい。けれど、家の状況を見るに今以上の空間を取ることは不可能さうだった。

低域の量感多過については、ほとんどのソースで感じた。量感が絞られれば、もっとコントラバスなどのピッツィカートやオーケストラの低弦 (チェロやコントラバス) の動きが見えるやうになって楽しくなると思う。ぼくの浅い経験からだと、この手の量感多過はスピーカーが後ろの壁に近過ぎることで起きることが多い。はたして、Kryna HDA35 は後ろにバスレフ・ポートのやうな穴があった。しかし、けろさんによるとそれはバスレフ・ポートではなく単なる空気穴とのこと。う〜ん。理由が分からない。まあ、仮にスピーカーを 30 〜 60 cm 前に出せたとしたら、リスニング・ポイントも同じ位い下げねばならず、非常に不都合が多そう。

一人暮らしならいざ知らず、家族が居るとなると、今のスピーカー位置は変えられそうにない。むしろ、不都合ありながらもベストなスピーカー位置になっているのではないかと思う。何より、高域・低域に (オーディオ的に) 不満があったとしても、音楽的にはほとんど影響を与えないのだから、ゴタゴタ言うより、よくぞここまでシステムを完成させたと感嘆すべきなのだと思う。

ES105A について

音を聞いてどうこう思ったというより、ES105A の置き場所を見て思ったこと。

muRata ES105A は素晴らしいスーパーツィーターだけれども、セッティングを詰めると更に良くなる。

  • ツィーターと同じ軸上に ES105A を持って来る
  • ES105A は安定しているやうに見えるけど、インシュレーターで随分音が変わる
  • スーパーツィーター用のケーブルも変えると変化大!

以上を踏まえた上で、ES105A をバッフル面から少しずつ下げて行く。すると、ピントがピタッと合うポイントが見つかる。そこが ES105A が最大限に威力を発揮する場所。これはスピーカーごとに違うので、自分の耳を信じてトライを繰り返すしかない。

けろさんは、ES105A の後ろ部分にインシュレーターを置き「下向き」になるようセッティングなさっていたが、それは最後の手段と考える方が良いと思う。特に ES105A を後ろに持っていくと「下向き」になった高音が、スピーカー自身に当たって上へ飛んで行ってしまいかねない。それでも ES105A を下向きにするなら、後ろ一点支持ではなく後ろ二点支持をお勧めする。超高域を扱うスピーカーの特性上、目には見えないけどすごく振動しているので、安定に支持する方が良ろしいかと。

御礼

忙しい中、色々と気を回して頂いてけろさんには感謝の念が断えない。

素晴らしい音を聞かせて下さって、ありがとう。あの後、自分のシステムで音を聞いたら驚くほど低域の音が汚くてびっくりした orz (もちろん、再セッティングして少しましになったけど)。

何度も、アイス・コーヒーのコップをひっくり返してごめんなさい。

そして御家族の方々、いきなりお邪魔して申し訳なかったです。

試聴 CD リスト

試聴で使った CD のリスト。一部 LP のものもあったけど、相当する CD を見つけてみた。

  1. Italian Concerto / Partitas Nos 1 & 2
  2. Partitas (Gieseking) 廃盤 (!?) につき画像なし
  3. One on One
  4. ヒストリー
  5. 「タイタニック」オリジナル・サウンドトラック
  6. ジ・エンド・オブ・ザ・ワールド(紙ジャケット仕様)
  7. ラテン・イン・ア・サテン・ムード(紙ジャケット仕様)
  8. Piano Concerto 5 Emperor

Italian Concerto / Partitas Nos 1 & 2 One on One ヒストリー 「タイタニック」オリジナル・サウンドトラック ジ・エンド・オブ・ザ・ワールド(紙ジャケット仕様) ラテン・イン・ア・サテン・ムード(紙ジャケット仕様) Piano Concerto 5 Emperor

No comments:

Post a Comment