LINE なぜ若者たちは無料通話&メールに飛びついたのか? (マイナビ新書)
コグレマサト まつもとあつし
読み終えたので、感想をつらつらと。
本書は、コグレマサトさんとまつもとあつしさんの二人の共著。内容は LINE のインストール、利用方法、利用事例の紹介。文体が落ちついていることを除けば、内容自体に他の LINE 本との大きな違いはない。
本書が面白いのは、アーリー・アダプターの目から見た LINE の姿。
LINE の競合とされる twitter, Facebook, skype を当たり前の様に使っている人間が共通して抱く感情。何故、いまさら LINE を始めなければいけないのか? 何故、LINE が (沢山の競合を退けて) 普及が進んでいるのか? この疑問に答えている。
コグレさんらの答えは、LINE のマーケティング戦略の違いが大きな差になっているという。
普通、IT 系サービスを展開する場合、自分達のサービスがいきなり一般ウケするなどとは考えない。一部のアーリー・アダプターが飛びついて、面白さを周りの人間に知らせている間に、サービスの完成度を上げてゆく。Twitter も Facebook も、一部の人間の興味をひき、何度かのブレイクを経て現在の磐石体制を作り上げた。他の IT 系サービスの多くもその例にならっている。
ところが LINE は違うという。
LINE の開発陣は徹底してアーリー・アダプターを無視した。とにかくシンプルに。とにかく分かり易く。とにかく楽しく。IT に疎い人間を想定して、どうやったら彼らに受け入れられるかを考えた。
少数のアーリー・アダプターからユーザーの輪を広げてゆくのではなく、多数の「一般人」を相手に利用を勧める。そんなことが出来れば苦労はない。IT 業界の常識を破り、未知のマーケティング手法に舵を切り、推敲を繰り返して生まれたのが LINE だった。
だから、Twitter や Facebook に棲息している人間には、異次元からやって来た様なアプリに映る。開発の流れを知り、マーケティング手法の異質さを知って初めて LINE が理解できる。本書は、そんな「不思議」さを扱っている点が面白い。
あとがき
LINE には色々と問題が指摘されている。例えばアドレス帳の内容を全てアップロードする機能 (これはアップロードしないこともできる)。本書を読んで、LINE を使い始めるか? と言われれば 3 割くらいの人が使い始めるかも。というのが正直な心。
それでも本書に読む価値があると思うのは、LINE の取った戦略が異質で、特に IT サービスを作っている人間への教養として優れていると思うから。
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