NTT レゾナント主催で参加した NTT R&D フォーラムの展示をレビューする。
デモに参加
本展示は、S-38 という展示番号で展示ブースを構えている。しかし、実は展示とは別に秘密のデモ (?) も行なっていた。今回、我々ブロガーはこのデモ・ルームを訪ねた。
デモ・ルームの収容人数は 10 人。ブロガーは 20 人。二つのグループに別れて、交代でデモを見た。
スタッフに、このデモをブロガー強制参加にした理由、一般公開していない理由を尋ねた。それは、先に書いた収容人数がネックであったとのこと。なるほど、デモは一定の時間を要するのに、収容人数が 10 人というのは心許ない。人数制限をしたくなるのも納得。ブロガー特権でデモを見ることができて役得。
デモ内容
やりたいことを乱暴にまとめると、Skype のテレビ会議を 3D 化すること。
部屋に入ると、3D 映像用のメガネが配られた。部屋の壁一面にはスクリーン。数メートル離れたところに、椅子が 10 脚。ぼくは、一番左端の椅子に腰を落とす。
司会の女性が現れた。彼女は廊下に立ち、後ろはガラス張りで外の風景が見える。右横にはマンガで描いたようなステレオ装置が一つ。
司会の彼女は 3D で奥行きを感じる。会議用ということなのか、3D 映画のように飛び出す (無駄な) エフェクトはない。あくまで、人間が立体的に存在し背景の中を動き回る。自然な 3D 感を演出している。大げさにいえば、「そこに人が居るよう」。という表現が近い。
彼女は動き回りながら、デモの説明をする。すると、彼女のいる位置から正確に声が聞こえる。彼女が左前に来れば左前から声が聞こえるし、奥へと下がれば奥から声が聞こえる。びっくりしたのは、その声がちゃんと「彼女」の口から発声されているのが分かること。
彼女はマンガのステレオ装置から音楽を流し (これは演出だね)、タンバリンを持って動き回る。タンバリンの音も、左右だけでなく前後に正確に「音の出る位置」が分かる。
更にデモは進んで、デモ体験者がスクリーンと椅子の間にあるスペースに立つよう促された。そのスペースに立てるのは一人だけ。順番にデモを受ける。ぼくもこの「スペース」に立ってみた。それは驚きだった。スクリーンに映っている映像が、ぼくの見る位置によって変化する。前に進めば、オーディオ装置が手に届くほどに見える。その位置から、画面の端を見ると、廊下の先とその後ろの風景が見える。後ろへ下がれば、ぼくの位置に合わせて司会者・風景が遠ざかってゆく。
技術的な裏話
女性は 3D 用のカメラで撮影して補正。背景は合成で作成。それを 3D プロジェクターでスクリーンに映し出す。
音声はスクリーン後ろにあるスピーカー・アレイから出ている。スピーカー・アレイとは、同じスピーカーを沢山ならべたもの。今回のデモでは、96 個のスピーカーが横一列に並んでいる。司会側にはマイク・アレイがあるとのこと。数は聞かなかったけれど、おそらく同じ数のマイクが並んでいて、マイクとスピーカーが一対一に対応しているのではないか。一列に並べられたマイクが受け取めた音を、一列に並んだスピーカーが音を出すことで、音の「三次元的再現」を可能にしているのだと思う。
オーディオに少し足を突っ込んでいる身からもう少し補足。音の三次元的な再現は 2 本のマイクと 2 本のスピーカーがあれば理論的に可能とされている。これがステレオ・サウンド。例えば、弦楽四重奏を聴けば、第一ヴァイオリニストがどの位置に座って、ヴァイオリンをどの高さに持っていて、第二ヴァイオリニストがその斜め後ろに座っている... といったことが再現可能。ぼくがそのオーディオ体験をしたのは、しっかりしたオーディオ・ルームと高級オーディオ・システムを使った。
値段だけを言えば、100 個近いスピーカーとマイクと壁一面のスクリーンと 3D カメラと 3D プロジェクターの合計金額は同じ位いかもしれない。けれど、2 本のスピーカーで同じことをやろうとすると、かなりのノウハウが要る。そのノウハウを会議室に持ち込めるかというと難しい。このデモで使っているシステムは、普遍性という意味では非常に高く、正に企業やイベントなどで使うのに適していると感じた。
閑話休題。
スクリーンの前には黒いボックスがある。これが、ある範囲内にいる人の位置情報を取得している。取得した位置情報に従ってリアルタイムに計算が行なわれ、その「位置にいる人」に見えるべき映像と音声が送られる。
裏話を一つ。少し歩いて隣の部屋を見せてもらった。そこには別グループのためにデモを行なっている司会者の女性がいた。デモ室の様子はスクリーンに二次元映像で表示。音声は無線のイヤホンで聞いている。グリーンバックの前に立ち、一人タンバリンを打つ姿は少しシュールだった。
今回は、一方向の 3D 映像音声配信だった。これを双方向で行なうためには、司会者側にも 3D プロジェクターとスピーカー・アレイ。そしてデモ被験者側に 3D カメラとマイク・アレイが必要になる。システムとしては大がかりだけど、双方向になった時のデモもいつか見てみたい。
最後に、スタッフが挙げた欠点を列挙する。
- 利用者は 1 人しか対応していない
- 裸眼立体を行ないたい (多人数対応が出来るはず)
- 多人数対応ではデータ量が人数分だけ増える
あとがき
装置が大がかりなので、Skype の様なパーソナル・ユースにはまだまだ技術革新が必要と感じた。
大企業の会議室、映画館などでのイベント上映、CEATEC などのイベント・ブースに人を置かず会社内から 3D プレゼンを行なう... 等々アイデアは開がる技術。これからの発展が期待。
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