2012-07-10

第 16 回国際電子出版 EXPO に行ってきた

2012-07-06 (金)、東京ビッグサイトで開催されていた「第 16 回国際電子出版 EXPO」に行って来た。

大まかな感想

話題は大きく分けて二つ。

一つは、電子出版を行なうためのプロセスの提供。一つのソースから ePub を出力したり PDF を出力したり。もしくは、iPad アプリでインタラクティブな「電子書籍」を作成したり。はたまた、電子カタログを作るソリューションの提供というのもあった。

もう一つは、電子出版のサービスや端末。富士通、東芝、Yahoo!、楽天 etc. 複数のサービス・端末がローンチされようとしている。海外の電子出版サービス —特に Amazon — が今年日本上陸と噂されている。今年は激動の年になりそう。

電子カタログについて

ぼくが回っただけでも、3 社が電子カタログのブースを持っていた。イシイと凸版とあと一つ (社名を忘れた)。探せば、もっとあったかもしれない。でも、どこの会社も各ブースの「カタログ」を電子化しているところはなかった。

この手のイベントで大変なのは、一回りすると大量のカタログを受け取ってしまうこと。一枚一枚は軽くとも、複数社・複数ブースを回ると、その重さは尋常じゃなくなる。後で見直すにしても、紙媒体だから検索も使えない。ここに、電子カタログの需要がある。

にもかかわらず、イベント用の電子カタログを用意しているブースに出会えなかった。「電子出版 EXPO」だというのに!! 会社がユーザーとちゃんと向き合っていないのではないかと不安になる。非常に残念だった。

著作権保護

電子書籍のサービスと専用端末が増えてきた。気になるのは著作権保護について。

一つはストリーミングを使うやり方。端末にデータが残らないので、データのコピーが出来ない。欠点は 2 つ。インターネットに繋げないと「読めない」こと。サーバーが過負荷になると読みにくくなること。2012-03-02 から 3 日かけて行なわれた Renta! の「少年画報社のマンガ読み放題キャンペーン」では、サーバーに負荷がかかってページめくりが遅くなりすぎて、読むのが嫌になった。ハリー・ポッターに様な大ベストセラーの新作が発売された時に、同様の問題が起きるのではないかと不安に思う。

ストリーミングを使わない方法に、「端末登録」と「ダウンロード期間」を定める方式がある (例えば富士通)。ネックはダウンロード期間。例えば、富士通ではダウンロード期間を 1 年と定めている。だけど、電子端末はすぐに古くなる。新しい端末を数年おきに買い替えることになるはず。ぼくの場合、iPad を 2 年に 1 度、新しいモデルにアップデートしている。ここでダウンロード期間が 1 年だと、古い端末で買った電子書籍を新しい iPad で再ダウンロードすることができない。こういった縛りを付けているサービスは使いたくない。

東芝の試みにも驚いた。東芝製の PC/タブレット/スマートフォンに専用アプリが入っている。その専用アプリ以外では電子書籍を読むことができない。東芝が電子書籍事業から撤退したら? 東芝の PC/タブレット/スマートフォンしか持っていないなら? 消費者の囲い込みは良いけれども、やりすぎ。

著作権を保護することは重要だけれども、極端なやり方は消費者離れを引き起こす。音楽業界の CCCD が良い例。もっと柔軟なやり方を模索して欲しいところ。

あとがき

電子出版の小さな波が起きていることを実感した。ただ、携帯電話でガラパゴス携帯を作り iPhone/Android 勢に根こそぎシェアを奪われたのと同じ誤ちをしているところもあった。グローバルな視点を持った開発がもっと欲しかった。

2 comments:

  1. ハリーポッターは、作者が出版社を通さずに直接ポッターモアというサービスを立ち上げて、著作権保護無しの ePub 形式で販売しているはずです。
    今月あたりから日本でのサービスも始めるとアナウンスもありました。
    個人的には、こういった方式が増えたきたときに、日本の出版社はどうするかが楽しみです。

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    1. guedra さん、はじめまして。ハリー・ポッターの情報ありがとうございます。ポッター・モアですか。フムフム。知りませんでした。良いですね。

      > 個人的には、こういった方式が増えたきたときに、日本の出版社はどうするかが楽しみです。

      そうですね。気になります。なるべく、出版社にも読者にも優しい動きをしてくれることを願っています。

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