2012-02-19

NTT R&D: 利用者の好みを学習する推薦システム: Another Me

NTT R&D フォーラムで見た展示をレビューする。

利用者の好みを学習する推薦システム: Another Me のデモ

Another Me は、「時間」と「ソーシャル・ネットワーク」と「嫌い」の三要素を取り入れたリコメンド・システム。展示ではニュース記事をサンプルに Another Me のデモを行なっていた。リコメンド・システムとして目から鱗の落ちるアイデアが詰まっていたので、紹介する。

まず「時間」をリコメンドに含めるアイデア。人は時間帯によって行動が異なり、行動によって興味も異なる。平日の朝は「ビジネス」ニュースを読み、帰宅時間には好きなスポーツのニュースが多くなる。日曜日には朝でもビジネス・ニュースは必要なくなり、他のニュースが表示される。

次に「ソーシャル・ネットワーク」を使うアイデア。SNS の様にお友達があって、「お勧め」ボタンが用意されている。ユーザーは友達の勧めるニュースを優先的に見ることになる。ここでも、「時間」のアイデアは組み込まれていて、朝は会社の上司・同僚のリコメンドを優先され、帰社時には友達のリコメンドが優先される。

どの時間帯にどのニュースを好むか、またどの時間帯にどのソーシャル・ネットワークの優先度を上げるか、これらは提示されたニュースを開くことで「Like」な評価点を上げてゆく。より Like なものほど上位に表示されるよう学習が進む。

学習には、もう一つ。「概念体系」を組み混んでいる。具体的には「キーワード」を概念でツリー上にしたもの。例えば「○○選手」は「巨人」に属していて、「巨人」は「野球」というカテゴリーの下に入る。この様な概念ツリーが予め作られていて、ニュースの一端にある「キーワード」から上位概念 (この場合は「野球」) が好きという風に学習が進められる。

三つ目のアイデアは「嫌い (Dislike)」をリコメンド学習に含めること。研究の結果、Like も重要だが、それ以上に Dislike が更に大きな影響力を持つと分かったらしい。ユーザーが Dislike を具体的な手段で示すことはなく、ニュース一覧から開いたニュースを「Like」、開かなかったニュースを「Dislike」と考える。例えば、経済のニュースでも、IT 系のニュースがよく開かれ、自動車関連のニュースはほとんど開かれないとする。すると IT 系を Like、自動車関連を Dislike とする。更に上司 A から勧められたニュースを読んでもツマラないものが多いから、開かなくなってゆく。すると、上司 A はソーシャル的に Dislike として判定される。

あとがき

時間に合わせてリコメンデーションを変えるアイデアにとてもひかれた。展示資料を読み返すと、「時間」だけではなく「曜日/記念日」「場所」「天気」「気温」といった状況に応じてユーザーの傾向をモデル化するとのこと。ライフログとニュース・リコメンデーションの融合と言っても良いかもしれない。

更にソーシャル・グラフ、概念体系、嫌いの反映とアイデアに満ちている。

ぼくが使うと、朝には基本 IT 系のニュースで埋めつくされ、ただし雨の日にだけ天気予報のニュースが入り、電車遅延がある場合にはその手のニュースがトップに来て... 更に「映画の日」には映画のニュースが入り、休日には本や音楽のニュースが表示される。なんてことになりそう。そうなると良いな。

ニュースだけでなくフィード・リーダーでも同種のリコメンデーションが入ると面白いに違いない。

そう思うと、ワクワクさせられる展示だった。

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