「思います」を謙譲語で「ぞんじます」という。この表記で、「存知ます」と書くテキストを見かける。というか、昔は僕もそう書いてた。これは「誤り」ではないか? という記事です。
ことの起こり
2002 年 10 月。後輩のメールを添削をした。
面識のない方にメールを出すので、失礼があってはいけない、と、誤字・脱字・敬語のチェックを頼まれたわけ。ちょこちょこと直して返したら、「これ、何て読むんですか?」と聞かれた (後輩は隣の席だった)。彼のディスプレイを覗き込んで、読めないという字を確認。そこには存知ます
と書かれてた。
ぼく: ああ、それは「ぞんじます」と読むんだよ。 後輩: こんな書き方しませんよ。 ぼく: 「存知」って書くでしょ。 後輩: いえ、漢字変換でこんな変換出たことないですね。
そう言って、彼が「ぞんじます」を変換すると、確かに候補に「存知ます」がなかった。
辞書で調べた
漢字変換にないからと言って、それが間違ってるとは限らない。常用漢字以外で、漢字変換されない用語はあるし、もしかしたら漢字変換の方が間違ってるかもしれない。
そこで、現代国語辞書を引いてみた。困った時の辞書頼り。
- 存知 (ぞんち)
- 〈名・他動サ変〉[文章語]知っていること。「その問題については、―していない」[類]承知 (しようち)
困ったことに、「存知」に関するエントリーは一つしかない。読みは「ぞんち」。動詞として使う時は、「存知する」「存知せず」という風にサ変活用の動詞になる。
「ぞんじます」というのは「ぞんずる」を丁寧にした形。「ぞんずる」は「ぞんぜ・ぞんじ・ぞんず、ぞんずる・ぞんずれ・ぞんぜ」のサ行変格活用。
「存知 (ぞんち)」が濁って「ぞんぢ」で、現代仮名遺い化しているのか? いやいや、「ぞんぜず」を「存知ず」とは書かないし、「ぞんずれば」を「存知れば」とも書かないぞ。「知」に「ぜ」や「ず」の読みがあるなんて聞いたことがない。
やっぱり、「ぞんじます」の表記は「存じます」であるべきだ。
当て字という反則技
ここまで記事を書いといて、広辞苑を引いてしまった...
- 存じ (ぞんじ)
- (「存ずる」の連用形から。当て字で「存知」とも書く。謙譲語) 知っていること。思っていること。承知。「ご―の通り」
「存ずる」の連用形から。当て字で「存知」とも書く。
って、そんなの反則だよ〜。
Google で検索すると、
- 存じます: 4,740,000 件
- 存知ます: 32,600 件
当て字の「存知ます」は、市民権を得ていると言っていいの? 悪いの?
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