オーディオの勉強にと、たくき よしみつ氏の「大人のための新オーディオ鑑賞術」、副題「デジタルとアナログを両立させた新発想」を読んだので、読後メモ。
大人のための新オーディオ鑑賞術 (ブルーバックス)
たくき よしみつ
講談社 2009-06-19
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ブルーバックス。780 円。174 ページ。初版 2009-06-19。
まとめ
作者の使う「アナログ」と「デジタル」の意味が前半と後半で変わる。
本の前半では、CD をデジタル、CD 以前のメディア (SP, LP, カセットテープ) をアナログと呼んでいる。後半ではパソコンを主にデジタル、LP プレーヤー・カセットデッキ・CD プレーヤーをアナログと呼んでいる。
作者の主張する「デジタルとアナログを両立させた新発想」をまとめると、こうなる。
CD プレーヤーはもう要りません。CD は全てパソコンにリッピングしましょう。保存先は外付け HDD で、バックアップ用に 2 台の外付け HDD が使えると良いです。楽曲管理はすべてパソコンで行ないます。パソコンからは無線で音をアンプまで飛ばします。Apple の AirMac Express やラトックシステムの REX-Link2 が無線で音を飛ばすのに良いです。アンプはパワー・アンプに繋げ、音量調節は PC 側でやりましょう。スピーカーは好みのものを買って下さい。
左の商品が Apple の AirMac Express、右がラトックシステムの REX-Link2S。本で紹介されていた REX-Link2 は既に新商品と置き換わった模様。
感想
「アナログ」と「デジタル」の用語用法統一が出来ていない様に、オヤッと思うことが少なくない。対象読者を明確にできていない感じも受けた。突っ込みは後でやるとして、作者の主張は的外れではない。
作者はネット・オークションを活用し安価なスピーカーとパワー・アンプを手に入れ、25,000 円でオーディオ・システムを構築しているという (PC の値段は除く)。それがどれ程の音なのかは分からないけれども、新品のミニコンポ (だいたい 3 万円くらい?) よりは音楽が楽しく聞けそう。一つのアイデアとして耳を傾ける価値はあった。
また、パソコン初心者向けの入門的な解説も良かった。例えば、可逆圧縮音楽フォーマット FLAC の説明、パソコンでリッピングする具体的な方法、Last.fm 等のネットサービスの紹介。
オヤッと思うこと
2009 年の本なのに、オープンリールやカセット・デッキ、MD デッキの話を持ち出して来る。オープンリールなど言葉さえ知らない人も多いのではないか? 見た人は何人いるのか? オープンリールの話はこんな風に現れる。オープンリールテープに 4 トラックのオーバーダビング録音ができるモデル...
。いきなり「トラック」という用語が出てきた。これ、分かる読者いるのかしらん? せめて「トラック」の説明を脚注なりに入れる親切心が欲しい。もし、これを説明なしで分かる読者は、ちょっとしたオーディオ・マニアなものでせう。
ヘッドフォンの章でも、いきなりオープンエア型ヘッドフォンが紹介されている。ヘッドフォンというと、音が外に洩れない (洩れにくい) ものだけど、オープンエア型ヘッドフォンは最初から音が外にも出る様に設計されている。ぼくは、オープンエア型ヘッドフォンをオーディオを始めてから知った。
もう一つ、例を挙げてみる:
レコードやカセットテープなどのアナログメディアにある音源をデジタル化するのは、時間はかかりますが簡単です。(中略)
ほとんどのパソコンには、ステレオミニプラグ形式のライン入力端子がついています。そこにアナログ再生機からのライン出力をつないで、録音ソフトで録音すれ来ば、HDD 内にデジタルファイルが作成されます。
パソコンのライン入力端子は、パソコンの説明書を読めば分かるかもしれない。だけど、アナログ再生機のライン出力って言われて分かる人はいるのかしらん?
オーディオの話になると、作者は読者が自分と同じ位いオーディオを知っている様に文章を書くことが多い。一読した限り、本書の想定読者はオーディオ・マニアではないと思うのだけれども... まあ、オーディオの話は本書の枝葉的なエピソードが多いので読み飛ばしても本書の「主張」に何ら影響はない。だからいいのかな?
なお本書では、5.1ch 再生はほとんど無視し USB DAC の紹介は行なっていない。5.1ch はホーム・シアターをやりたい人には興味のあることだし、USB DAC は最近の PC オーディオで注目を集めている方式なので誌面が割かれないのは残念。そういう事に興味のある人は、別の本かムックを買うしかないかな。
あとがき
全体的にバランスの悪い本だと思った。音楽を聴く人でパソコン初心者を対象にしている... はずなのだけど、一部オーディオ・マニアな話が紛れ込んでいる。現状に合わせて第 2 版が出たら、期待ができるかも。
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