2011-11-05

B.M.C. Audio の音にワクワクした

2011-11-04、インターナショナル・オーディオ・ショーに行ってきた。今年は会社も辞めて金欠。だから「買い物」を目的にショーを見て回る必要がなかった。その分、気が楽だった。そして、そんな時に限って、心ふるわせるオーディオ・ブランドとの出逢いがあったりする。

そのブランドは、B. M. C. という。Balanced Music Concept の略。新進のオーディオ・メーカーで、お国はドイツ。ブランド創立は 2009 年。日本への輸入開始は 2011 年 (今年) から。日本での輸入代理店は Axiss

B. M. C.

B. M. C. の Balanced は、バランスの取れた音を指している。ここで言うバランスは、技術 (engineering)、再生する音楽、見た目、そして価格も含む (オーディオの「バランス回路」を指しているあけではない)。

代表は Carlos Candeias 氏。40 代の壮年。オーディオ・ショーでは (ドイツ人なのに) 流暢な英語で喋っていた。氏は元々、1984 年から OEM でオーディオ機器の開発に従事。15 年近い経験を経て、一般向けオーディオ・メーカーへの転身を図った。

オーディオ・ショーの講演で (ほとんど) 期待せず、音楽を聞く。CD プレーヤー、DAC、パワー・アンプは B. M. C.。スピーカーは Wilson Audio の Sophia 3。お気づきのことと思うが、プリ・アンプがない! プリ・アンプがない (正確にはオプションである) のがこの B. M. C. の特長。

スピーカーからはスピード感があってとてもフレッシュな音が飛び出してきた。衝撃!! 手嶌葵の The Rose は目の前で本人が歌っている様に会場の空気が一変した。マリア・カラスのカルメンは録音の古さを感じさせない新鮮な音。カラスの絶唱も胸に突きささる。

アンプ・メーカーの音としては日本の Soulnote に音が近い。ガレージ・メーカーでは、ツカダ・アンプ (See なお&トラさん邸訪問記 第一回、第二回 前編後編; EMGinn - ツカダアンプ) を連想させる音だった。

このメーカーのキモは、余計な電気信号経路を削ること。例えば、CD プレーヤーは CD から音楽データを取り出し「電流」に変換する。この「電流」は途中で「電圧」に変換される。プリ・アンプは変換された電圧を増幅させる。これがボリューム調節に当たる。そして「電圧」は再び「電流」に変換され、パワー・アンプでスピーカーを動かすに足るだけの電流に増幅させられる。ここで、プリ・アンプを省けば「電流→電圧→電流」という手間がなくなる。手間がなくなれば、それだけ CD で取り出した音楽情報を劣化させずにスピーカーに渡せる道理。

技術的に突っ込んだ話

上記説明を読んだ (オーディオに詳しい) 友達がメールで補足説明をくれた。彼のメールは「本文」の訂正の形で送られてきたので、これをそのまま写すと文章が細切れになってしまう。ぼくなりの言葉で文章を直して、B. M. C. の技術について突っ込んでみたい。

まずは一般的なオーディオ・システムの話。

CD プレーヤーは CD から音楽データを読み出し、音楽データをアナログ信号である「電流」に変換する。次に「IV 変換」でこの「電流」を「電圧」に変換する。CD プレーヤーは音楽データを「電圧」としてプリ・アンプに引き渡す。

プリ・アンプはまず受け取った電圧を一旦減衰させる。この行程が一般に「ボリューム調整」に当たる。どの程度減衰させるかは、ユーザーのボリューム指定に寄る。その後、「電圧」を増幅してパワー・アンプに引き渡す。

プリ・パワー間のケーブルを通る間に電圧は減衰する。そこで、パワー・アンプは最初に減衰した電圧を増幅し直す。その後、「電圧」を (スピーカーを動かすに足るだけの) 「電流」へと変換する。

まとめると、CD プレーヤーは CD からデータを取り出し「電流」という形にする。そして「電圧」を出力。プリアンプは電圧の減衰・増幅を行ない、「電圧」を出力。パワー・アンプは電圧の増幅と電流への変換を行ない、「電流」を出力。スピーカーは電流を受け取って「音」にする。CD プレーヤー・プリアンプ・パワーアンプ間は全て「電圧」で音楽データの受け渡しが行なわれている。

一般の方式を「電圧電送」とするなら、B. M. C. の方式は「電流電送」。

CD プレーヤーは音楽データを読み出して「電流」にした後、その電流をプリ・アンプを介さず直接パワー・アンプへ引き渡す。よって、四つの行程が省かれる。すなわち、「電流から電圧への変換 (CD プレーヤー)」「電圧の減衰 (プリ・アンプ)」「電圧の増幅 (プリ・アンプとパワー・アンプ)」「電圧から電流への変換 (パワー・アンプ)」。これだけの行程がなくなるので、「音楽」が新鮮さを保つ。

ぼくの説明で プリ・アンプを省けば「電流→電圧→電流」という手間がなくなる と書いたが、これは正確さに欠ける。何故なら、電流から電圧に変換するのはプリ・アンプではなく CD プレーヤーだから。つまり、「電流伝送」には CD プレーヤー (もしくは DAC) が「電圧」ではなく「電流」を出力する必要がある。そして、B. M. C. の CD プレーヤーや DAC は電流出力する仕様になっている。

蛇足ながら、一般の機器と接続できるよう B. M. C. の CD プレーヤーは「電圧」の出力も出来るし、パワー・アンプも「電圧」を受け取る口がある。

もちろん、これではボリューム調節ができなくなるので、他の手段が用意されている。また回路をあまりシンプルにし過ぎると、スピーカーからの逆起電力 (音を出した反作用で、スピーカーからアンプに電流が戻って来る現象) でアンプがスピーカーに振り回されてしまう。こういった難しい技術的な課題を解決して、商品として世に出たのが B. M. C. Audio というわけ。

ぼくは回路に詳しくない。知ったかぶりをしたら間違いを犯しそう。もうちょっと技術的な話や商品のラインナップは PDF のカタログがあるので、そちらを参照して欲しい。

現在のところ、CD プレーヤー、プリ・アンプ付 DAC、インテグレーテッド・アンプ、パワー・アンプ (ステレオ、モノラル)、フォノイコライザーを発売しているらしい。

あとがき

音が素晴らしかったのと、ドイツの人ということで講演後に Candeias 氏に話しに行った。氏は気さくで、技術的な疑問にも易しい英語で説明をしてくれた。

調子に乗って自分が使っているスピーカーの話を持ち出した。Bösendorfer のスピーカー。セッティングが難しく、ピアノ・メーカーが作ったスピーカーという先入観もあり、ピアノだけしか鳴らないスピーカーとして日本では知られている。というか、発売時期が短かかったので、存在自体知らないオーディオ関係者も多い。でも、ベーゼンドルファー社のあるオーストリアと B. M. C. のあるドイツはお隣の国。もしかしたら、知っているかもしれない。そんな下心で「ベーゼンドルファー・スピーカーを使っている」と言った。

返ってきた答えは「That's difficult speaker」だった。そう。ベーゼンドルファー・スピーカーはセッティングをかなり詰めないとまともな音で鳴らないし、アンプも選ぶ。とても「難しい」スピーカー。Candeias 氏、よくご存じでらっしゃる!! 氏は続けて、「ベーゼンドルファー (他、数社のスピーカー名を挙げ) の様な難しいスピーカーもこのアンプはよく鳴らす。是非、試して欲しい」と言う。

ベーゼンドルファー・スピーカーを「難しい」スピーカーと言ってもらえるだけでも、こちらは舞い上がっている。その上、(海を渡って来た) 開発者に是非アンプを使って欲しいなんて言われると... 心は陥落。帰りの電車は、B. M. C. のことばかり考えていた。病気が治って、職についたら、本気で考えてみる。

See also

参考

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