「ソニー・フラッグシップ・モデル ブロガー限定先行体験会」に参加してきた。概要は以下の通り:
- 日時: 2016-10-08 (土) 11:15-12:45
- 場所: ソニー・ショールーム / ソニーストア 銀座 (銀座 8-1-5)
- 参加人数: 30 人
- 参加費用: 無料
イベントにはソニーのフラッグシップ・モデル ウォークマンである NW-WM1Z と NW-WM1A、同フラッグシップ・モデル ヘッドホンである MDR-Z1R、そして別売提供される KIMBER KABLE 社協力のヘッドホン・ケーブル MUC-B20SB1 が用意された。
これらは全てオープン価格。ソニーのサイトにある「ソニーストアで購入すると」を参考価格としてのせておく:
- ウォークマン NW-WM1Z: 299,880 円 (税別)
- ウォークマン NW-WM1A: 119,880 円 (税別)
- ヘッドホン MDR-Z1R: 199,880 円 (税別)
ウォークマン NW-WM1Z と NW-WM1A の一番の違いは筐体。NW-WM1Z が銅ブロックの切削から作られたものなのに対して、NW-WM1A はアルミブロックの切削から作られている。この他、アンプからヘッドホンジャックの線材 (NW-WM1Z は KIMBER KABLE 社の線材; NW-WM1A は普通の? 銅の線材) や、ヘッドホン出力の LC フィルターに使う抵抗 (NW-WM1Z は新開発の大型・高音質な抵抗; NW-WM1A はメルフ抵抗) に違いがある。
イベントの進行
会場には椅子が 30 脚、1 列 10 脚 x 3 列で列んでいた。最初の 1 列目にウォークマンとヘッドホンが置いてある。
イベントは試聴タイムで始まった。1 人当たりの試聴時間は 7 分。1 列目の人が聴いたら、2 列目の人にウォークマンとヘッドホンを渡す。7 分 x 3 列分で計 21 分。
試聴が終わったら、ソニーの開発者が入場。ヘッドホン開発者の話、ウォークマン開発者の話、と続いた。これが 1 時間くらい。
最後は質問タイムで締めた。
ヘッドホン MDR-Z1R 開発者の話
ヘッドホン開発者二氏の話を聞いた。MDR-Z1R 開発者である潮見俊輔氏と、MDR-Z1R メカ担当者である尾崎雄二氏。
面白いと思ったことを列挙する:
- ドライバーのサイズは 70 mm。一般的な人の耳のサイズである 65 mm より大きくすることで、平面波に近づけるのが目的
- マグネシウムを使ったドーム振動板の開発に 10 年以上をかけた。マグネシウムは極溥の 30 ミクロン。そもそもマグネシウムは乗りが良くない。まず薄くすること、そして、薄くしたものを破れずに整形することが難しい。
- ハウジングの突起は中心からわざと外している。中心に突起があると、振動モードが動きやすくなってしまうため
- ニューヨークにあるソニー・ミュージックのマスタリング・スタジオで音のベースを作った
- 低音の音の再現を重要視した。コンサート・ホールのように広い部屋では低音に共鳴する周波数が現れる。これをヘッドホンで再現できることが、音の空気感の大事な要素となっている
- 組み立ては日本。プロ向けのマイクなどを作っている工場で組み立てを行なっている
ウォークマン NW-WM1Z/WM1A 開発者の話
ウォークマン開発者二氏の話を聞いた。音質担当の佐藤浩郎氏と、メカ担当の石崎信之氏。
面白いと思ったことを列挙する:
- UI を刷新。アナログ・メーターとスペクトル・アナライザーの動きにはかなり力を入れている
- フル・デジタル・アンプ S-Master HX を新しくおこした。DSD のネイティブ再生と PCM の 384 kHz の再生ができるようになった
- 基板のオーディオ回路のレイアウトを変更。アンプ・ブロックと電源/デジタル・ブロックをレイアウト的にきっぱりと分離した
- 4.4 mm バランス接続 (5 極) も採用。2016 年 3 月に JEITA で規格化。1 本で使える、L 型のプラグを使える、太くて強度がある、といった利点を挙げていた
- 筐体を真鍮で作った試作モデルは、低音は良かったけど、高音が全く伸びなかった
- NW-WM1Z では金メッキを使っている。一般にキラキラしている金メッキは下地にニッケル・メッキを使っている。ニッケル・メッキは磁性体なので音が悪くなる。NW-WM1Z はニッケル・メッキを使っていない
音を聴いてみて
イベント最初に与えられた 7 分間の試聴タイムの感想を書く。時間が短かかったので、ウォークマンの聴き比べは行なわず、NW-WM1Z のみを使った。
NW-WM1Z に入っていた曲は次の 4 つ:
- Just The Two Of Us (グローヴナー・ワシントン Jr.) Apple Music
- ブルックナーの交響曲 第 9 番 第 2 楽章 スケルツォ 抜粋 (スクロヴァチェフスキ指揮ミネソタ管弦楽団) Apple Music
- 虹の彼方に (手嶌葵)
- 今夜はビート・イット (マイケル・ジャクソン) Apple Music
ブルックナーの交響曲のみ PCM 96 kHz/24bit。それ以外は FLAC (Just The Two Of Us は 192kHz/24bit, 虹の彼方に は 96kHz/24bit, 今夜はビート・イット は 176.4kHz/24bit) だった。
このうち、Just The Two Of Us は知らない曲だったのでスルー。ブルックナーの第 9 番も聴きこんでいる曲じゃなかったのでスルー。手嶌葵の虹の彼方にと、マイケル・ジャクソンの今夜はビート・イットをメインに聴いた。
手嶌葵の「虹の彼方に」は、彼女のアルバム「The Rose 〜 I Love Cinemas 〜」に収録されている。残念ながら Apple Music や Google Play Music はこのアルバムを配信していない (2016-10-10 現在)。手嶌葵はギターとベースとピアノの小さな編成でこの曲を歌い上げる。ヘッドホンは、しっかりとしたボーカルの存在感を聴かせてくれる。手嶌葵の芯がありつつもハスキーな声質を上手に再現している。やや、実像は強めか。ピアノは中高音域で曲に華やかさを与えている。こまできれいなピアノの入っていた曲だったかな? と思ってしまったほど。中高音域の表現が上手いんだと思う。
マイケル・ジャクソンの「今夜はビート・イット」は、怪物アルバム「スリラー」の一曲。マイケル・ジャクソンの曲はどれも作り込みが凄くて、満足に鳴らすことが難しい。オーディオ的な難しさも怪物級と思う。そういうわけで、いくつか不満点が残ったけれど、総じて好印象。とても聴きやすかった。例えば低音。低域の量感を増やすような音作りは決してしない。低音が伸びているのが分かる。下品でない低音。スピード感もある。STAX と比べると、少しパンチが弱いかもしれないけれど、音楽の楽しさは十分。個人的にはマイケルの声にもう少しシルキーさが欲しいと思った。
あとがき
イベントだからこそ体験できること。それが各所に配された楽しいイベントだった。開発者の方々と直接話をする、NW-WM1Z の筐体の元になった銅ブロック (約 1.8 kg) を直接手に取る、そして実際にヘッドホンを装着して音を聴く。オンラインから得られる情報とオフラインで提供できる体験の配分が丁度良かった。
一つ欲を言えば試聴について。どんなスタイルでやるのか予め知りたかった。一応、iPhone にオーディオ・チェック用の音源をダウンロードして持っていったけど、使う機会がなかった。ウォークマンに入っている曲だけを聴くスタイルと分かっていたら、何の曲が入っているのかイベント前に質問していたと思う。そして、曲が分かれば、その曲を予習して行っていた。今は Apple Music や Google Play Music で曲を聴けるから、予めウォークマンに入っている曲のプレイリストを作って共有してもらうようお願いしていたかも。自分のシステムで予め曲を聴いていたら、もっとフラッグシップ・モデルとの「音」の違いが分かったんじゃないかな。
ぼくはクラシック音楽が好きだけど、ブルックナーの第九は馴染みがなくてスルーしてしまった。悔しい。今、ブルックナーの第九を聴きながら、このブログを書いている。良い曲だなーと思う。
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