2023-06-06 (火) 02:00、Apple は WWDC のキーノートを放送して、各種新 OS (iOS 17, iPadOS 17, macOS Sonoma, watchOS 10, tvOS 10) と新デバイス (M2 チップ Ultra, MacBook Air, Mac Studio, Mac Pro, Apple Vision Pro) を発表した。
Apple Vision Pro は長年噂され続けていた Apple の AR/VR ヘッドセット。年内にアメリカで発売され、来年中に各国での発売が予定されている。価格は 34,999 ドル。約 50 万円?!
iOS 17
iOS 17 では主な新機能として連絡先ポスター、ステッカー、スタンバイが追加され、新アプリ「ジャーナル」のリリースが予告された。
連絡先ポスター
電話アプリや連絡先アプリなどで、自分の見た目をポスターのように表示する機能が追加される。連絡先ポスターはロック画面と同じようにカスタマイズが可能で、写真もしくはミー文字とタイポグラフィーの組み合わせで表示される。
CallKit からの利用も可能なため、VoIP アプリからも連絡先ポスターの利用が可能になる。
ステッカー
ステッカーを貼る機能が追加される。ステッカーはメッセージ・アプリなどで利用が可能で、ステッカーのように貼り付けることができる。貼り付けられるものはミー文字や絵文字など。ステッカーパックをダウンロードして利用することも可能になるらしい。また、写真から背景を取り除いて、ステッカーにすることも可能。Live Photos からライブステッカーを作成することもできる。
絵文字が使えるあらゆる場所で使えるとされている。
スタンバイ
Apple Watch のナイトスタンド・モードの iPhone 版。充電中に iPhone を横置きにすると、専用のスタンバイ画面を表示する。この画面は 3 ページで構成されていて、左右スワイプで移動可能。その構成は、ウィジェットのページ、写真のページ、そして時計のページ。
ウィジェットはスマートスタックに対応していて、時間などに応じて適切なウィジェットが自動的に表示される。また、ユーザーがウィジェットを手動で切り替えることも可能。時計には複数の文字盤が用意されている。
この他に、スタンバイ画面ではライブアクティビティーの表示や、Siri を使っての操作も可能とされている。
またナイトモードでは、赤の色調で表示され、眠りに誘う工夫が凝らされている。
ジャーナル・アプリ
Apple が提供する日記アプリ。2023 年後半リリース予定。
連絡先・写真・音楽・ポッドキャスト・位置情報・ワークアウト etc. の情報から、日記を書くための「候補」を出す機能がある。これらの候補を出すために開発者には、Suggestions API が提供される。
その他
各アプリの新機能を列挙する:
- 電話アプリ
- Live Voicemail: 留守電に残されているメッセージをリアルタイムに書き起こす。テキストを読んで途中で電話に出ることも可能
- FaceTime アプリ: FaceTime をかけて相手が出なかった場合、メッセージを録画して残せる
- メッセージ・アプリ
- キャッチアップ: 未読メッセージの先頭まで辿るボタンが表示されるようになる
- Swipe to Reply: 吹き出しをスワイプすると、インライン返信できる
- Audio message transcription: オーディオメッセージが書き起こされる
- 安否確認 (Check In): 無事に帰宅したことを友人に知らせることができる。帰宅したら自動通知。帰宅しなかったら、自動で各種情報 (現在地・経路・バッテリー情報など) が共有される。
- 検索フィルターが追加される
- NameDrop: AirDrop で iPhone を近づけると連絡先情報を渡せる
- Siri
- Hey Siri が Siri だけで起動可能になる
- 連続してリクエストを伝えられるようになる
- マップアプリ: オフライン用に地図をダウンロードできるようになる
- 写真: 「お気に入りの人」にペットを追加できるようになる
iPadOS 17
iPadOS 17 での変化で目を引くのはウィジェットとステージマネージャーの進化。それから、iOS でしか提供されていなかったロック画面の変更機能とヘルスケア・アプリがやって来る。
ウィジェット
インタラクティブ・ウィジェットが導入される。今までのウィジェットは、情報を表示するか、アプリを開くか、もしくは大きなボタンを表示してアクションするくらいしかできなかった。なので、ウィジェットの中でチェックボックスを置いてチェックを入れたり、再生ボタンを押して音楽再生を開始したりという操作性を提供できなかった。iPadOS 17 からは、そういったユーザーがインタラクティブに操作するウィジェットの作成が可能になる。
ステージマネージャー
ステージマネージャーは今までよりも細かくウィンドウの位置とサイズを変更できるようになる。
ロック画面
iOS で導入されていたロック画面の設定機能が iPadOS にもやって来る。iPad 版のロック画面では、ウィジェットを表示する領域が左側に寄せられて iOS より広くなる。
また、iPad の大画面に合わせてアストロノミー壁紙が刷新されている。
ヘルスケア・アプリ
iOS のみに提供されていたヘルスケア・アプリが iPadOS にもやって来る。iPad の大画面向けに最適化されている。
misc
その他、キーノートで発表のあったもの。一部の機能は iOS でも利用可能。
- PDF のテキスト・フィールドを認識して、直接入力が可能になる
- FaceTime に外部ディスプレイに内蔵されたカメラを利用可能になる
- フリーボード・アプリに水彩・万年筆といった描画ツールが加わる
- フリーボード・アプリで共通同作業メンバーのフォロー機能が追加される
macOS Sonoma
macOS Sonoma (macOS 14) で目を引くのはウィジェット機能。続いてビデオ会議系の強化が上げられる。
ウィジェット
iOS や iPadOS でしか提供されていなかったウィジェット機能が、macOS でも使えるようになる。嬉しいことに、macOS 用のウィジェットが用意されていなくても、iPhone アプリ版のウィジェットも (macOS で) 利用可能になる。利用には同じネットワーク内に iPhone があれば良いらしい。
macOS のウィジェットは iOS と同じようにインタラクティブ・ウィジェット。更にアプリを開くとウィジェットは半透明になって、デスクトップにあるウィジェットに気を紛らわせないよう配慮されている。
ビデオ会議
Facebook を始めとしたビデオ会議機能に機能追加が行なわれる。1 つ目は画面共有のプレゼンター・オーバーレイ機能。画面共有をしているプレゼンターの姿を、他の視聴者に見せるための機能。この機能には、プレゼンターの姿を小さなバブルの中に入れて表示するスモールオーバーレイと、プレゼンターの姿を大きく表示して共有画面をプレゼンターの後ろ横に配置するラージオーバーレイの 2 種類が提供される。
2 つ目はリアクション・エフェクトの追加で、ビデオ会議内に花火を上げたりする機能が追加される。このエフェクトはジェスチャーで起動可能とのこと。例えば、花火を上げるエフェクトは、親指 2 本を立てることで起動できる。
リアクション・エフェクトは FaceTime の他に Zoom や Microsoft Teams, Webex などのサードパーティーアプリでも利用可能になる。
ゲーム機能
ゲーム機能の強化として、ゲームモードが導入される。ゲームモードでは、ゲームに対して、最も高い優先度を CPU や GPU に割り当てる。また、バックグラウンド・タスクの稼働率を下げる。こうすることで、より滑らかなフレームレートを提供できるとしている。
また、Blueteeth にサンプリング周波数を 2 倍にすることで、Xbox と PlayStation コントローラーの入力遅延を低減させるという。
Safari の強化
Safari にプロファイル機能が導入される。仕事とプライベートで、Cookie 情報・ブラウズ履歴・機能拡張・タブグループ・お気に入りなどを切り替えられるようになる。
ウェブサイトをアプリ化する機能が追加される。アプリ化されたページは Dock に保存され、Stage Manager 内でもアプリとして動作するという。
その他、Safari はパスキーに対応したり、プライベート・ブラウジング・ウィンドウに対してロック機能を提供したりする。
watchOS 10
watchOS 10 では大幅なデザイン変更が行なわれた。
スマートスタック
文字盤でデジタルクラウンを回したり、下から上へスワイプすると、スタックされたウィジェットにアクセスできるようになる。見た目は Siri 文字盤に似ているけれど、どの文字盤からでもアクセスできるのが特徴。長押しでウィジェットの追加・編集も可能になる。
コントロールセンターへのアクセスは、下から上へのスワイプではなく、サイドボタンを押す。
新しい文字盤
新しく追加された文字盤は 2 つ。1 つ目はスヌーピーの文字盤。スヌーピーとウッドストックが表示される。文字盤には天気情報が反映される。
2 つ目はパレット。時間の変化に合わせてディスプレイの色が変わる。
サイクリング機能
サイクリングのワークアウト機能が強化される。Bluetooth 対応の自動車センサーに接続可能になり、自転車のケイデンス・パワーなどの情報を取得できるようになる。また、これらのデータを使って FTP (機能的作業閾値パワー; Function Threthold Power; 理論上、1時間継続できるサイクリング強度の最高レベル) の計算を行なってくれる。加えて、パワーゾーン (FTP から算出されるパワー領域のことで、6 つのゾーンに分けられる) の表示を可能にする。
サイクリングの情報は、iPhone でもライブ・アクティビティで自動的に表示されるようになる。
ヘルス系の強化
マインドフルネスと近視に関する機能強化が行なわれた。
マインドフルネスでは、自分の気持ちを記録できるようになる。これらの記録は iPhone のヘルスケア・アプリからも確認可能。また、クリニックでも使われる標準検査を提供。鬱や不安症を発症するリスクを確認できるようになる。
近視周りの強化では、Apple Watch の環境光センサーを使って日光の下で過ごした時間を測定できるようになる。近視のリスクを下げるのに、屋外の日光の下で 80〜120 分以上過ごすことが有効だかららしい。また、iPhone や iPad では、TrueDepth カメラを使って画面との距離を測定し、長時間、目とデバイスの位置が近い場合は警告を出すようにしてくれる。
tvOS 10 その他
tvOS 10 では、コントロールセンターが刷新される。また、Siri Remote を探すアプリから探せるようになる。加えてスクリーンセーバーの写真を、写真のメモリーから選択できるようになる。
最後に、FaceTime アプリが tvOS にも提供される。Apple TV にはカメラとマイクがない。そこで、iPhone の連携カメラ機能を使う。センターフレームにも対応するとのこと。この機能は API としても提供されるらしく、2023 年末には Zoom や Webex が FateTime と同じように tvOS 上で使えるようになるとされている。
その他のデバイスの話。
CarPlay では SharePlay が導入される。Apple Music の音楽再生を、後部座席の人たちが SharePlay 経由で行なうことが出来るようになるとのこと。
AirPods は適応型オーディオなる機能を提供する。これは、外部音取り込みとアクティブ・ノイズキャンセリングを動的に組み合わせた機能で、外部音取り込みが基本だけどノイズになる音はノイズキャンセルしてくれるというもの。電話中なら、周りの音や音楽をノイズとして小さくしてくれるし、会話中は音楽の音量を小さくしてくれる。
新しい Mac
15 インチの MacBook Air と M2 Max/M2 Ultra にアップデートされた Mac Studio、そして M2 Ultra をサポートする Mac Pro が発表された。
どの新機種も予約開始は 2023-06-06 から、発売は来週から。
15 インチ MacBook Air
15 インチ MacBook Air の価格は 198,800 円から。スペックは次の通り:
- MacBook Air 15 インチ/2023
- ディスプレイ: 15.3 インチ、Liquid Retina
- チップ: Apple M2
- 薄さ: 11.5 mm
- 重さ: 1.5 kg
- カメラ: 1080p FaceTime
- マイク: 3 マイクアレイ
- スピーカー: 6 スピーカー
- Thunderbolt ポート x2
- ヘッドフォンジャック
- 充電 MagSafe
- バッテリー 18 時間
MacStudio
新しい Mac Studio は、チップが Apple M2 Max にアップデートされる。また、後述の Apple M2 Ultra も選択可能になる。価格は 298,800 円から。
Mac Pro
Mac Pro は Apple M2 Ultra チップを標準搭載し、PCIe gen 4 拡張スロットを 8 つ (背面に 6 つ、上部に 2 つ)、Thunderbolt 4 ポートを 6 つ、HDMI ポートを 2 つ持つ。価格は 1,048,800 円から。
Apple M2 Ultra
Apple M2 Ultra チップが発表された。M1 Ultra と同じように、M2 max チップを 2 つ繋げる構成。搭載可能な最大メモリーが 192 GB に増えている。
- 24 core CPU
- 76 core GPU
- 32 core Neural Engine
- 192 GB ユニファイドメモリ
Apple Vision Pro
Apple の AR/MR ヘッドセット Apple Vision Pro が発表された。価格は 3,499 ドル (約 50 万円)。発売はアメリカ国内で 2023 年年内を予定。2024 年年末までに各国での発売開始を目標とする。ただし、日本が最初の株外発売国に含まれるかどうかは未発表。
主なスペックは次の通り:
- チップ: M2 チップ + R1 チップ
- ディスプレイ: マイクロ OLED (両目で 2,300 万ピクセル、片目だけで 4K 相当)
- カメラ: 12 個
- センサー: 5 つ
- マイク: 6 つ
- スピーカー: 空間オーディオをサポート
- バッテリー: 外付けで 2 時間
- 認証: Optic ID
- その他: デジタルクラウン
R1 チップは Vision Pro のために Apple が新しく作成した Apple シリコンチップ。リアルタイム処理を担当するチップで、12 のカメラ、5 つのセンサー、6 つのマイクからの入力を高速処理する。
Optic ID は目の虹彩を使った認証システム。Face ID と同様に、ロックの解除・Apple Pay の利用などに用いられる。
ユーザーからの入力は、目と手の動きでほぼ完結するらしい。さらにテキスト入力に関しては、バーチャル・キーボードと音声入力がデフォルトで用意される他、Bluetooth デバイスを接続してトラックパッドやキーボードも利用可能。もちろん、ゲーム用のコントローラーもサポートされる。
用意されるアプリは、visionOS 専用のアプリの他に、iPhone, iPad 用のアプリがある。また、Mac を見つめると、Mac の画面を Vision Pro の中に取り出すことが可能になる。加えて、Unity アプリがネイティブで利用可能になるとのこと。
Vision Pro 特有の機能
Eye Sight 機能は、あなたの目を Vision Pro のディスプレイ上に表示する。そうすることで、周りの時間はあなたの目を見ながら会話することが可能になる。もし、あなたが Vision Pro を完全没入モードで使っていて、外の様子が見えていない場合は、目を表示せず、周りの人に周りが見えていないことを教えてくれる。
空間再現写真とビデオは、Vision Pro の 3D カメラを使って撮る写真・ビデオ。撮影したシーンがそのままに再現されるように見える... らしい。
あとがき
今年の WWDC キーノートは盛り沢山だった。Vision Pro は数年振りの「One more thing...」として発表された。未来感のあるデバイスなので使ってみたい。でも、値段が値段なので、来年買えるかどうか分からない。