Esoteric の X-1s を買った。1991 年発表の CD プレーヤー。当時の定価 490,000 円 (税別: 当時の税率は 3% なので税込だと 504,700 円)。店頭で中古品として置かれていた。当に一期一会。
購入に当たって、他の購入候補との比較試聴を行なった。購入候補については過去記事をどうぞ:
- clmemo@aka: 10 万円代の CD プレーヤー比較 その 1
- clmemo@aka: 10 万円代の CD プレーヤー比較 その 2
- clmemo@aka: 10 万円代の CD プレーヤー比較 その 3
今回の比較試聴は、18 年も前の高級 CD プレーヤーは現在の CD プレーヤーに勝るものなのか? 現在の CD プレーヤーにすると、どのレベルに位置するものなのか? そういったことを確かめるのが目的。
結論を先に書く。
- X-1s の能力 (解像度、音場の広がり etc.) は、現在の同価格帯には及ばない。定価 30 万円台の CD プレーヤーとほぼ同等か。。。
- X-1s の音作りは自然で、無理にどこかを伸ばそうという発想がない。良い意味での「高級機」らしさがあった
ここ 20 年間でのデジタル技術の進化は素晴らしい。技術だけで言うなら 30 万円台で昔の 50 万円代とほぼ同等の能力が手に入る気がした。けれど、50 万円台の音作りの「自然さ」は、昔も今も変わらないように思う。
試聴機器、その他
試聴は、オーディオスクェア 相模原店で行なった。
試聴機器は、アンプに LUXMAN L-550AII を、スピーカーに Sonus faber の Minima Vintage を使った。
LUXMAN L-550AII 純A級プリメインアンプ L550A2 [241,999 円]試聴には、モーツァルトのレクイエムから、4 曲目「怒りの日」全曲と続く 5 曲目「奇しきラッパの響き」のソプラノが歌い終わるところまでを使った。
比較試聴 その一
CD は、サー・ロジャー・ノリントン指揮ロンドン・クラシカル・プレーヤーズによるモーツァルトのレクイエム。
モーツァルト:レクイエム(ドルース版)
モーツァルト
曲名リスト
1. フリーメーソンのための葬送行進曲K.477(479a)
2. レクイエム ニ短調K.626(ドルース版)
3. モテット「アヴェ・ヴェルム・コルプス」K.618
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CEC CDプレイヤー(シルバー) CD3800-SL [69,300 → 52,000 円]
まずは、ぼくが今使っている CEC CD3300R に最も近いモデルを試聴。
最初にこれだけを聞くと、音場が広く奥行きはまあまあ。音楽は雄大に鳴るものの、解像度が低めに感じる程度。
- Myryad Z112-CD [157,500 円]
店頭にあった本来の本命その一。本命その二の ATOLL は、店頭展示がなかった。
CEC と比べて音場が左右・奥へと広がる。何より楽器と楽器の分離感 (楽器のセパレーション) の度合いが高い。
やはり元本命なだけあって、圧倒的。
- Esoteric X-1s (本命)
Myryad よりも更に音場が広がった。左右にはより広く。奥へはもっともっと深く音場が広がる。X-1s を聞くと、「今まで聞いていた音は窮屈だった」と感じるほど。音像定位が半端なく、あるべき所にあるべき楽器の音がピシリと存在する。全体的に「自然」! 変に力が入っていない。
X-1s を聞いた後、Myryad に戻してもう一度聞く。響きが強く、熱い。音像は前に出てくる。この響きの「強さ・熱さ」が、無理して「音を作っている」感に思われた。
Myryad から再び X-1s に戻す。音場が左右前後に広がるのを強く感じた。
この時点で、10 万円台の CD プレーヤーはぼくの中で消えた。この音を聞いてしまうと、もう戻れない。
あとは、X-1s が今の高級機でどの程度のものかを見定める。というのは、本来、来年の年末に 50 万円台の CD プレーヤーを買うつもりだったから。20 年前の 50 万円を買ったからといって、今の 50 万円と同レベルと思ってていいの? 今の CD プレーヤーならいくら位いのレベルなの? 40 万円台? 30 万円台? それによって、次に買う CD プレーヤーを「(当初の予定通り) 来年の年末に 50 万円台で狙う」べきなのか、「もう少し時間をかけてお金を貯めて、更に上の機種を狙う」のか、方針が変わる。
エソテリック SACD/CDプレーヤー X-05 [428,400 円]
約 20 年前の 50 万円台と、現在の 50 万円台の比較。上には実売価格で 43 万円と書いてあるけど、定価は 504,000 円で丁度 X-1s と同価格帯に当たる。
X-1s と比べて、音の自然さはそのままに、定位が明確に、解像度が高く、そしてアタック感が正確になった。20 年の進化ははっきりと目に見えた。
LUXMAN D-06 SACD/CDプレーヤー ラックスマン [420,000 円]
こちらも実売 42 万円と書いてあるけど、定価は 525,000 円。X-1s と同価格帯。
X-05 と比べると、響きが乗る。音が前に出てくるようになって、自然さよりも熱さを感じた。音場も十分広い。もっと書けば、X-05 ほどではないけれど、X-1s よりは広い。
X-05 と D-06 を聞いて思うのは、今の 50 万円台は、X-1s よりも能力が一段高いということ。この後 X-1s に戻してみたところ、明らかに解像度が下がり、音場が狭くなったのを感じた。更に Myryad まで戻して聞くと、これは窮屈の極みだった。
比較試聴 その二
CD は、ミシェル・コルボ指揮ローザンヌ声楽・器楽アンサンブルによるモーツァルトのレクイエム。ノリントンの録音に比べて残響成分が多めで (録音場所が教会だからかな)、合唱団がより奥に配置されているのが顕著に分かるディスク。たまたま持って来ていたので、こちらのディスクでも比較試聴を行なった。
Mozart - Requiem / Fauré - Requiem, Messe basse, Cantique de Jean Racine
- Myryad Z112-CD [157,500 円]
ホール感が出て、解像度も高く感じる。
- Soulnote sc1.0 [147,000 円]
Myryad に比べて、解像度がかなり高く、奥行きの表現力・音像定位の明確さに秀でる。ただし楽器の分離感では、Myryiad の方が高く感じた。
10 万円台では、Myryad, Soulnote, ATOLL のどれかで決まりでしょ? という感さえある。まあ、ぼくの個人的な好みだけど。
- Esoteric X-1s (本命)
「自然」の一言。X-1s が 「10 万円台のプレーヤーは『音作り』をしていますね」、と諭しているかのように思えた。具体的な違いは、ノリントンの CD と同じ。コルボの CD の方が、違いがより分かり易かったかも。
エソテリック SACD/CDプレーヤー X-05 [428,400 円]
X-1s に比べて音のエッジが立つ。解像度も高い。
音場は広く、特に全体のバランスが良い。どんな音楽ソースでも合いそう。ただし、音を作っている感を感じた。これが 50 万円台との差なのかな。
X-1s に戻してみると、響きが増した。また、音作りがより自然に感じた。今回、試聴した中では、X-1s と技術的に一番近い所にあった機種かもしれない。
あとがき
10 万円台の CD プレーヤーを買おうと、20 種近い CD プレーヤーを聞き比べた。10 万円を少し下回るエントリー機も聞いた。50 万近い高級機も聞いた。一番の好みは、42 万円する Esoteric の X-05 だった。現実を見るとフランスの ATOLL かイギリスの MYRYAD が本命だった。
そんなある日、オーディオ・ショップに行って目を疑った。
Esoteric の CD プレーヤーが中古で出ていた。
X-1s だった。
価格は破格の 88,000 円。
ATOLL も MYRYAD も吹っ飛んだ。
来年末に 50 万円台の CD プレーヤーを買うつもりだったけれど、その必要はなくなったと実感している。次に CD プレーヤーを買うとしたら、その上を狙う。良い買い物をした。
蛇足
家に X-1s を導入したら、使ってる XLR ケーブルが気になり始めた。このケーブル、ノイマンのマイク用ケーブルにノイトリックの端子を使って自作したものなのだけど、帯域が狭い。今までの CEC CD3300R では気にもならなかったのだけど、X-1s の高品質さがその不足分を明らかにしてしまった。高域が出ない、低域が出ない、とぼくを苦しめる。
X-1Sは昔使っていました。デザインがしゃれてますよね。
ReplyDeleteAnonymous さん、コメントありがとうございます。
ReplyDeleteX-1s、昔、使ってらっしゃいましたか。昔だと、ずいぶん高い買い物だったことでしょう。高価さに見合うデザインを持っていますよね。