先日、Amazon に注文していた「Ajax イン・アクション」が届いた。
原題「Ajax in Action」。Dave Crane, Eric Pascarello, Darren James 三氏による共著。監修はあの株式会社 はてな! Ajax の基礎から開発に必要な技術・情報を網羅した、決定版ともいうべき内容らしい。そのページ数、653 (日本語版)。帯には「Ajax のすべてを一冊に凝縮」と「全米コンピュータ書ランキング 三週連続 一位」とある。
さて、ページを繰れば最初に現れるのは、はてなの CTO 伊藤直也氏の「監修者まえがき」。
ぼくは、このまえがきの第二段落目で、早くも挫折しかけてしまった。もしかしたら、同じように躓く人もあるかと思い、少しばかり駄文を書いてみる。
監修者まえがき
まず問題の箇所を、引いてみませう。
いま、ウェブアプリケーション開発の世界は過渡期にあります。
ドキュメントを閲覧することを主目的に設計されたウェブブラウザーがアプリケーションインターフェイスの表現力に乏しいというのは当然のことで、その制約の中でウェブアプリケーションを構築することに疑いを持つ人はそれほど多くありませんでした。
ぼくが混乱したのは、「その制約の中で WA を構築することに疑いを持つ人は多くなかった」という文章 (WA=ウェブアプリケーション)。まず「その制約の中で」は、「Ajax なしで」と言い換えてもいいでせう。次に「多くなかった」は「少なかった」と言い換えられる。すると「疑いを持つ人は少なかった」は「ほとんどの人は〜〜と信じていた」となって、元の文意は「ほとんどの人は Ajax なしで (Gmail のような) WA を構築できると信じていた」となる。これはおかしいよね。「できない」と思ってたことが「Ajax」で「出来た」ってのが「Ajax」のウリなんだから。
解読
さて、何を読み違えたのか見て行きませう。
まず第一段落。たったの一つの単文から分かるのは二つの事柄:
- Ajax イン・アクションは、ウェブアプリケーション開発に関りが深い内容を扱う
- ウェブアプリケーション開発は過渡期にある
「過渡期」を日本語辞典で引くと「ものごとの移り変わっていく、途中の (安定していない) 時期」とある。つまり「旧」から「新」への移行。読者はここで、「旧」いものが何を指し、「新」いものは何だろう。きっと、「新」いものへ移ることになった「何か」を説明するんだろうな... と予想する。上手い書き出しだね。
問題の二段落目。第二段落は一つの複文から構成される。これは二つの単文に分けられる。
- ドキュメントを閲覧することを主目的に設計されたウェブブラウザーがアプリケーションインターフェイスの表現力に乏しいというのは当然のことである。
- その制約の中でウェブアプリケーションを構築することに疑いを持つ人はそれほど多くなかった。
一つ目の単文から分かるのは...
- ウェブブラウザーはドキュメントを閲覧することを主目的に設計された
- 従って、ウェブブラウザーはアプリケーションインターフェイスの表現力に乏しい
ここから、二つ目の単文の「その制約」が指すのは、ウェブブラウザーは「文書閲覧専用」「アプリケーション作成に不向き」という制約と言えやう。二つ目の単文は次のよう読める。
- 「アプリケーション作成に不向きなウェブブラウザーでウェブアプリケーションを構築すること」に疑いを持つ人はそれほど多くなかった。
さあ、今こそ、ぼくが文章のどこを読み誤ったかを示そう。
一つは、ウェブアプリケーションを勝手に「Gmail のようなウェブアプリケーション」と解釈したことにある。ここで伊藤氏のいうウェブアプリケーションは、Ajax が使われていない頃のウェブアプリケーションも含む。というより、いわゆる Web 1.0 的な (今から考えると) 使い勝手の悪いウェブ・ブラウザー上で動くアプリケーションを指している。
もう一つは、「疑いを持つ」の解釈。ぼくは、「疑う人が少い」ってのは「ほとんどの人が信じてる」って解釈したけど、そうじゃなかった。ここは、「(現状に) 疑いを挟む」と解するべきだった。つまり「(現状に) 疑いをはさむ人が少い」=「現状をあたり前と思っている」と解釈すべきだった。
上記のぼくの誤りを踏まえて、第二段落を直すと、次のようになる。
- 文書閲覧専用でアプリケーションインターフェースに乏しく、アプリケーション作成に不向きなウェブブラウザーを使って、(リッチでない静的な) ウェブアプリケーションを構築することを、(昔の技術者は) あたり前のことだと思っていた (=デスクトップ・アプリケーションのようなものは作れないと思っていた)。
「まえがき」は、「アプリケーションインターフェースに乏しい (=アプリケーション作成に不向き)」という前提が、Ajax の出現によって崩れ、動的でリッチなウェブアプリケーションが作れるようになったと続く。
あとがき
実は「Ajax イン・アクション」はまだ第一章も読み終わってない。というか「まえがき」ばかり読んでいた。けれど、目次と本文のつまみ読みの感想として、Ajax に興味を持つ人にはお勧めの本なのではないかと思う。書店で見かけたら、手に取ってみてはいかがでせう。
Ajaxイン・アクション
Dave Crane Eric Pascarello Darren James
インプレス 2006-06-09
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